栄養学(Nutrition)は、日本で栄養学を創始した佐伯矩(さいきただす、1886年9月1日 – 1959年11月29日、著作権保護期間満了)が、養い栄える、つまり、従来「営養」と表記されていたものを健康を維持しさらに増進する意味合いで「栄養」にするよう提言した栄養に関する学問である[1]。また佐伯矩によれば、栄養とは生命活動を維持するために外界の物質を摂取し利用することであり[2]、社会に属する人間として食物を選択する道徳観や経済性、日本の国土を考え小型動物や魚類や大豆を重視するという食糧政策も訴えた[3]。栄養が保険・経済・道徳の基本となるという栄養三輪説である[4]。つまり、物質である身体と、理性、心の三つが栄養を通して統合されたものである。
問題として、とくに1980年代から影響を与えはじめ2000年以降に大きく発表されている病気を予防するために玄米のような精製されていない穀物を食べ動物性食品および砂糖を減らすという栄養学的事実や、食料自給率を上げるためにはアメリカ産小麦粉(メリケン粉)や動物性食品および砂糖を減らさなければならないということが、知れ渡ってないということが、食生活に対する混乱を長引かせているように思う。医療側に情報が提供されるようにし医師や患者から栄養士に科学的に圧力をかけるほうが早いように思う。つまり、第一流の栄養学者による専門家報告や根拠に基づいた医療(EBM:evidence-based medicine)の考え方、診療ガイドラインの食事療法のレベルから、迷信にまみれた日本の栄養学を指導すべきということです。
とりあえず、最新の栄養疫学の知見をもとに食生活指針を自前で合成する。
進展についてはこちらも参照➫栄養学と身体の病気や心理学的な関連―科学的根拠、2012年3月~2011年
はじめに佐伯矩の意志を肝に銘ずべきである。
嗜好は絶対的なものでは無い。方便によって変動し易く、又教育の可能性が大である。(中略)
嗜好はこれを無視してはならぬと共にこれを放任せず、その善導に不断の努力を怠ってはならぬのである。
(佐伯矩『栄養』改定版。1942年。5ページより引用。まぼろしが旧漢字を現代漢字に変更。)
又それでは人類の飲食法から動物の飲食法に堕するものである。だから適切なる栄養を摂って、合理的に生活せんとする栄養の研究は、学問としても実際問題としても、人生にもっとも大切なものである。
(佐伯矩監修『栄養料理講習録』1923年。4ページより引用。まぼろしが旧漢字を現代漢字に変更。)
そして、科学的根拠に基づかせることである。
ここでは、「栄養学は、純粋科学ではなく、応用科学である」という立場をとる。つまり、不思議を解き明かすための科学ではなく、人の健康に資するための科学としての立場をとる。これが、栄養学が生化学や生理学などと異なる点である。このように考えると、メカニズムの解明が栄養学の最終目的ではないことがわかる。(中略)逆に、たとえメカニズムが不明でも、または、完全には解明できていなくても、実際に人の世界で役に立てば、それは栄養学的には意味のあることである。(中略)ヒト以外を用いた研究の成果だけでは栄養学として十分ではないということである。
(佐々木敏「第15章エビデンスに基づく予防・治療」日本栄養食糧学会『栄養学研究の最前線』建帛社、2008年。169-178ページより引用。ISBN 4767961262。)
佐伯矩「栄養の問題を正解する時、科学と道徳と人類愛が翕然として統一融合せられる
[5]」「栄養の本義は栄養の科学化を確立すると共に之が道徳化をも強く厳かに垂訓す
[6]」
なぜこんなに正反対の情報が溢れて混乱しているのか
1994年アメリカの栄養補助食品健康教育法(DSHEA)以降、サプリメント・健康食品に健康効果が表示できるようになり、「単体なので研究が行いやすい食品」の科学的根拠のレベルがあがってきています。サプリメントについては、国立健康・栄養研究所も科学的根拠をまとめたホームページ「「健康食品」の安全性・有効性情報」[7]で公開しています。もちろん医療をはなから信用していないところからの情報もあります。おそらくサプリメントの科学的根拠以前の感覚で医師は懐疑的です、さらに産業利益のための情報が混じる。
サプリメントではなく食事となると、要因が多すぎて研究が一気には進展しない。世界保健機関など研究が蓄積された事項に関する情報は、栄養に携わっているサイドに広く伝わっていない。世界がん研究基金が食事に関する調査をまとめると、医師が読むものと思っているのかもしれない。医師も読んでいない。その情報のまま医師や栄養学を教える大学教授が新書とかを書くので、いったい何でいろんな人がこんなに正反対のことを言っているのかと、また情報がぐちゃぐちゃになります。
だから、情報のスジを押さえましょう。誰も書いていないので、大勢の人が分かっていないのかもしれない。自分が分かっている部分で書かざるを得ない。
大まかな栄養学の流れ
大まかな歴史については国立健康・栄養研究所の元理事長の渡辺昌(わたなべしょう)が書いた『栄養学原論』[8]とウォルター・グラットザーの『栄養学の歴史』[9]によって概括的な歴史を知ることができる。『健康・栄養食品アドバイザリースタッフ・テキストブック』[10]のより新しい版と、『フード・ポリティクス-肥満社会と食品産業』[11]により、食生活指針の歴史やサプリメントについて知ることができる。以降はもう少し掘り下げる。
- まず栄養学以前の日本の流れです。明治時代に陸軍の薬剤艦(薬に関する偉い人)の石塚左玄(いしづかさげん)が提唱し、栄養素のナトリウムとカリウムを根拠に独自の陰陽理論(バランスの理論)と玄米菜食(食養)によって病気予防・病気治しを行っていた食養会は[12]、第二次世界大戦中に食養はわからない石塚玄という謎の人物が会長になり厚生省の意向で[13]国民食協会に統合される。「食事で病気を治す」ということに関して、また二番煎じがあまたに出てくる健康法の出版物については、食養の流れが本流です。食養会は第二次世界大戦後にGHQに解散され[14]、会報誌『食養』は『食生活』という食養を内容としない栄養士のための雑誌に変わっている。木端微塵である。その後、食養会の理事を務めた桜沢如一(さくらざわゆきかず)によってマクロビオティックへと発展する。桜沢は、『日本精神の生理学』『自然医学としての神道』による食物医学として解釈した神道を基礎に、栄養学を斬り、戦時に反戦運動を行い、東洋思想を西洋に翻訳(パリ名誉市民受賞)、西洋思想を日本に翻訳、西洋社会構造の分析、食物教育を基礎とした草の根世界平和運動の普及といった超人的偉業を遺しました。ネット上に情報がないので書いておくが、肉食をするヨーロッパ人より日本人のほうが腸が長いという説は、ショイベの解剖[15]を根拠に小説家であり医師の森鴎外が主張したことである[16]。
- 大正時代に佐伯矩が現在の国立健康・栄養研究所につながる栄養学専門機関を作り医学から栄養学を独立させた。戦前は、ビタミンB1欠乏で二大死因の脚気を発症する懸念のある白米はすすめられず、佐伯矩は7分搗き米を[17]、女子栄養学園をつくった香川綾や陸軍糧友会はさらに精白しても胚芽が残っていればいいとして胚芽米を[18][19]、食養会界隈と医師の二木健三は精白されていない玄米を提唱し、論争され、戦後も同様の主張であった[20][21]。
1926年には、三井財閥の増田孝男爵が、脚気治療の有効成分であるビタミンB1を発見していた慶応大学医学部に、食養を研究しようと食養研究所を設立したが、病院給食のパイオニアを生み食養は研究されなかった[22]。1937年に、佐伯矩は国際連合の会議で、各国に栄養研究所を設立すること、栄養士の養成、精白の度合いが中程度の米を提案し、この提案は満場一致で採択された[23]。この会議で、鍵のかかったホテルの矩の部屋から講演のための資料のみが盗まれたが急きょ図表を用意し講演を果たした[23]。終戦日(1945年8月15日)には、玄米を主食に野草まで食べるという「食生活指針」が公布されている[24]。玄米の吸収率が問題にされる場合があるが、二木謙三が述べるように、玄米のほうが腸のすべりをよくする脂質やビタミン・ミネラルといった栄養素が豊富なので、吸収される栄養の量は、消化率を掛けたら玄米のほうがいい[25] - 戦後は、アメリカと日本政府が組んで、アメリカの資金で小麦と畜産技術とパンの製造技術を輸入し宣伝しまくり、畜産物からビタミンB1が摂取できるため白米と洋風の食事が異例のない速さで日本の食卓に広まった[26]。アメリカの食事に近づけ近づけと頑張っていました。栄養学という名で、生活習慣病を増やし、環境破壊に拍車をかける学問が猛威をふるっていきます。

マリオン・ネスル『フード・ポリティクス-肥満社会と食品産業』
アメリカでベストセラー。食生活指針、健康食品、産業。しかし、1977年に「米国の食事目標」によってアメリカの当時の食事が上位10の死因のうち6つに関連するため、動物性食品と砂糖と塩と乳脂肪を減らし精白されていない穀物を食べたほうがいいというアメリカの発表(通称マクガバン報告、全米栄養協会初代会長で全米科学アカデミー・食品・栄養部会部会長でハーバード大学栄養学教授のマーク・ヘグステッドも継続的に協議[27])があると[28]、この影響を多大に受けて日本も1980年に米・野菜・魚を中心に畜産製品と果物が適度である日本型食生活が大切と打ち出すようになる[29]。胚芽米も栄養に富むとして打ち出されている[29]。「米国の食事目標」はその後、畜産・砂糖産業に食べる量を減らすという表現を弱めるよう抵抗を受け、1980年から5年ごとに改定され後続していく「アメリカ人のための食生活指針」においても同様であり、畜産業界の人間がアメリカ農務省の要職に就き研究を停止させることも起きており、「アメリカ人のための食生活指針」の作成にも関わりこうした告発を行っているマリオン・ネスルは産業の影響があることを国民に教育する必要があるとしている[11][30]。1989年の世界保健機関の会議では、生活習慣病とくに心臓病の予防の観点から、タンパク質を含む食品は動物性食品を減らし植物性食品として豆があると報告される[31]。
現在、多くの国において、慢性疾患及び特に心臓病の予防に役立つように、食事パターンを改善する多くの努力が行われている。このような食事の勧奨は飽和脂肪の消費量の削減をも含んでいる。現在、血液中のコレステロールを減らすために、食事中の動物性食品を少なくし、植物性食品を増やす設計的食品の開発が鋭意進められている。(中略)
かなりの国で食べられている植物性たんぱく質類の慣用的な組み合わせ(アジアにおける米―豆、中近東における小麦ー豆、アメリカ諸国におけるとうもろこしー豆は、セリアル類と豆類のアミノ酸スコア組成が相互に均整のとれたアミノ酸混合物をつくるので、良好なたんぱく質品質を持っている。
(国際連合食糧農業機関編集『たんぱく質の品質評価-FAO/WHO合同専門家協議報告』国際食糧農業協会訳、国際食糧農業協会、1992年。8、51ページより引用。(原著 Protein Quality Evaluation, 1991))
T・コリン・キャンベル、トーマス・M・キャンベル
中 あらゆる生活習慣病を改善する「人間と食の原則」
アメリカでベストセラー。
750超の1流論文より、食事は植物ベースの全体食で。1990年代には、食品成分(というかFDA-米国食品医薬局が食品、医薬品、サプリメントと3分類しているもののサプリメント)に、健康にもたらす影響を表示できるDSHEA(ディーシェイ)がアメリカにでき食品の微量成分の研究が集まってくる。1997年にはFDA近代化法によって食品にも心臓病リスク低下などの効能が表示できるようになり、このことは大豆をアメリカで一般的に食べられる食品に昇格させるなど食習慣変化に多大なる影響を与えている。アメリカ国立がん研究所(NCI)による、抗がん作用のある食品成分(すべて植物性)を添加したデザイン食品でがんを予防しようというアメリカのデザイナーフーズ計画があったが、成分が自然に含まれる食品に視点が移って計画は中止されている[32]。1997年に世界がん研究基金(WCRF:World Cancer Research Fund)が、4500以上の論文を元に1回目のがん予防の食生活(Food, Nutrition and the Prevention of Cancer[33])を打ち出す。中国という食習慣がものすごく多様化し何がどう影響しているのかの統計に適するとヘグステッドが指摘する環境で[34]、オックスフォード・コーネル・北京大学と各国のがん研究機関が中国全土で大規模な調査を行ない[35]、研究を指揮したコリン・キャンベルは完全菜食が最も安全と結論した[36]。コリン・キャンベルの著書は、日本では2009年末に『葬られた「第二のマクガバン報告」《上巻》「動物タンパク神話」の崩壊と「チャイナ・プロジェクト」』(the China Study)[37]として出版された。- 世界保健機関が、2003年に生活習慣病(肥満、2型糖尿病、心血管疾患、がん、虫歯・歯周病、骨粗しょう症)と食事の関連についてのレポート(Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases[38])、2002年にビタミンとミネラルに関するレポート(Human Vitamin and Mineral Requirements[39])、2007年に『タンパク質・アミノ酸の必要量』[40](Protein and amino acid requirements in human nutrition[40])を出す。2007年11月11日には世界がん研究基金が、7000以上の論文を元に、がん予防のための第二次報告(Food, Nutrition, Physical Activity, and the Prevention of Cancer[41])を行い、以前より動物性食品が制限され、マクロビオティックを含めたベジタリアンはがんリスクが少ないとも結論されている。

ウォルター C. ウィレット
『太らない、病気にならない、おいしいダイエット -ハーバード大学公式ダイエットガイド』ハーバード大学公衆衛生大学院に病気を予防するための栄養学である栄養疫学科を作ったウォルター・ウィレット[8]が、「アメリカ人のための食生活指針」とは違い産業の関与しない純粋に病気を予防するための最新の疫学を反映した食事法を打ち出し[42]、ホームページ上で継続されている[43]。ウォルター・ウィレットの著書で統計手法の理論書である『食事調査のすべて-栄養疫学第2版』[44]は、邦訳の序文で、監訳した日本の国立健康・栄養研究所の当時の理事長の田中平三によって、栄養疫学を大きく進展させ絶大な影響を与えていると賞賛されている。国立健康・栄養研究所に渡邊昌というがん研究に精通し、糖尿病にも詳しい渡辺昌が理事長に抜擢され、がんや糖尿病を予防するための著書を出している。 - さらに、2000年以降、根拠に基づいた医療(EBM)に従った最新の科学的知見を集成した各疾患ごとの診療ガイドラインが蓄積され、その中には食生活における危険因子や栄養療法の科学的根拠が充実したガイドラインもある。
栄養に関する科学的根拠を示す論文を読んでいる国立健康・栄養研究所の偉い人は、ウォルター・ウィレットとか、世界がん研究基金とかいろいろと教えてくれているというのに、日本の栄養学・臨床栄養学の本、栄養士養成機関、天下り先の各種なんとか協会、その料理教室、その出版社の本は、なぜかまだ3、4番目の食事内容を前提として普及させているようなのがほとんどに思えます。最新の科学に反する理論、白いご飯に、肉に、乳製品に、マーガリンに、バターに、砂糖に・・・、分かりやすいです。6番のあたりの知見が集成された食生活指針が存在しないため、自前で合成する必要がある。さらに7番も合成するともっと詳しいことがわかる。食料自給率については、農林水産省による『我が国の食料自給率-平成15年度食料自給率レポート』[45]、この平成15年度というレポートが非常にまとまっています。精白された白いご飯でビタミンB1もろもろを不足し、必然的に畜産物を必要とすることからどうなっているのかを見ていきましょう。まず栄養学創始者・佐伯矩の言葉です。
経済的の経済といふのはそれ故、例えば其の地方に沢山出来るものを使ふ。地方にないものを使つてはならぬ。(中略)又季節々々のものを使ふ。(中略)色々な品物が加工されて、さうして精製されて来ると、成分が単純になって来て、さうすると他のもので其の成分を補って行かねばならぬ。さういふ精製されたものは避けるが良い。
(佐伯矩監修『栄養料理講習録』1923年。126ページより引用。まぼろしが旧漢字を現代漢字に変更。)
この『栄養料理講習録』でもすでに畜産物をすすめている栄養学だが、このような精白に関する知識は日本では乏しくなった。アメリカだと、精白されていない食べ物を食べようという専門家の意見は1950年年代にも政府の食生活指針にとりいれられ[11]、FDA近代化法で全粒穀物(ぜんりゅうこくもつ、whole grain、「whole=丸ごとの」精白されていない穀物)を51%以上含めばがんや心臓病のリスクを減らすと表示できるようになり[46]、2005年の食生活指針では主食は全粒穀物を51%以上にしようと大きく継承されている。
栄養素
とりあえず栄養素の分類を簡単に頭に入れ、次に食品の話に移ります。
| 分類 | 名称 | 説明 |
|---|---|---|
| PFC 三大栄養素 |
たんぱく質(Protein) | 1グラム4キロカロリー。アミノ酸が集まったものがたんぱく質。 |
| 脂肪(Fat) | 1グラム9キロカロリー。種類が重要。細胞膜も形成し、脳の60%が脂肪酸。 | |
| 炭水化物(Carbohydrate) | 1グラム4キロカロリー。単糖類(果糖やブドウ糖)、二糖類(果糖とブドウ糖が結合したショ糖)、多糖類(ブドウ糖が多数結合したデンプン)などがある。3つ以上結合した三糖類以上になると、口の中で歯を溶かして虫歯(う蝕)を起こすいわゆる虫歯菌の餌になりにくい。 | |
| 食物繊維 | 多糖類であることが多く、非デンプン性多糖類とか難消化性デンプンとかがある。多いほど肥満の予防になったりする。 | |
| 微量栄養素 | ミネラル | ナトリウム、カリウムなど。鉱物。人体のカルシウムは骨と歯に99%存在する。 |
| ビタミン | ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンCなど。名前に意味はなくABC分類で追加してきた。ビタミンDは太陽光を十数分浴びることで必要量合成される。 | |
| 植物栄養素(フィトケミカル) | 大豆イソフラボン、海洋生物を赤く染めているアスタキサンチン[47]、茶のカテキンなど。欠乏症はないが健康への影響が無視できない。 |
ビタミンと植物栄養素は、水溶性と脂溶性に分けられ、白米のとぎ汁で捨てられてしまう水溶性のビタミン、野菜のゆで汁に溶け出す水溶性ビタミンや色素でもある植物栄養素というように考えられます。肌の新生を促すビタミンCを細胞膜に浸透しやすくするために、本来水溶性であるビタミンCを脂溶性に加工した脂溶性ビタミンCもサプリメントがあります。
向精神性物質の観点からは、緑茶には精神を興奮させるカフェインと、落ち着きをもたらすテアニン[48]が同時に含まれるのが面白い。
食品と栄養素
1995年に世界保健機関は、栄養素で示すのではなくて、多くの人にわかりやすくするために食品で示す「食物ベースの食生活指針」の作成を求めた[49]。ごはんを茶碗に1杯と何々をこのくらい・・・とイラストで示される。
1992年に、アメリカで発表された食物ベースの食生活指針である「食事ピラミッド」の後のことです。食事ピラミッドは、肉は主食よりも少なくていいことが一目瞭然なので、アメリカ農務省の要職に就いた人物によって一度回収され、畜産産業による回収への関与に注目を集めてしまいました。
日本の食物ベースの食生活指針である「食事バランスガイド」の分類と要点を拾えば以下のようになる。
主食:炭水化物の豊富なもの。米、麦、トウモロコシが世界の主食。たんぱく質の必要量の半分程度もここから摂取できる。ビタミンとミネラルも豊富である。精白しなければ、ビタミン、ミネラルもさらに豊富になり食物繊維も1日10グラム以上摂取できる。穀物の皮である、米では糠(ぬか)、麦ではふすまの部分にビタミンやミネラル、食物繊維が豊富。胚芽の部分にビタミンEなどが豊富。麦を輸入に頼っているのは、安い輸入小麦を国民が求め国内の米麦二毛作をやめたため。畜産物の餌としても浪費され、米と小麦を足した国内消費量は1350万トン程度だが、畜産用途ではトウモロコシの年間約1700万トンの輸入のうち約1200万トンが畜産餌になる[50]。
畜産物・油脂1kgを生産するために必要な穀物等の量(試算) (2004年、農林水産省)[51] 牛肉 豚肉 鶏肉 鶏卵 大豆油 なたね油 11Kg 7Kg 4Kg 3Kg 5Kg 2Kg
国連食糧農業機関(FAO)によれば、牛は世界最大の環境破壊の原因になっています[52]。加工したトウモロコシは、砂糖のかわりにジュースに添加する果糖ブドウ糖液糖などの異性化糖にもなります。この高果糖コーンシロップは砂糖よりも体重を増加させ、特に腹部肥満(メタボリックシンドローム)になります[53]。よりトウモロコシは発展途上国の主食であり、これを経済の論理で強奪している。
主菜:たんぱく質の豊富なもの。豆、肉・卵、魚。主にたんぱく質を供給し、ビタミンとミネラルも豊富である。豆には食物繊維が豊富。魚には海洋植物から生物濃縮されてきたビタミンB12やオメガ3脂肪酸が豊富。農林水産省によると、肉は食料自給率100%を考えると国民1人につき10日に1食分、卵は10日に1個しか生産できない[54]ぜいたく品であるため、そもそも日本で肉・卵という前提がおかしい。
副菜:主に野菜。カロリーをあげずにビタミンとミネラルを多く供給する食品。食物繊維も野菜をしっかり食べれば1日10グラム未満摂取できそう。ただしイモ類は、炭水化物が豊富。
乳製品:カルシウムは、牛乳、葉野菜、ゴマ、骨ごと含む小魚、海草に豊富であるため、ここを乳製品で分類すべきではない。つまり、農林水産省によると、牛乳は食料自給率100%を考えると国民1人につき5日にコップ1杯分しか生産できないため[54]、そもそも日本で乳製品という前提がおかしい。
果物:野菜のようにビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富。果物に含まれる果糖は体に悪さしますね。果物を制限する必要がある病気の糖尿病、高血圧症、高脂血症が、厚生労働省によると国民の47%に疑われる[55]。少なめで覚えるべきです。
補足的に野菜ジュースに触れますと、ビタミンCや食物繊維など野菜から摂取するものとして重要な栄養素が損なわれます[56]。果物を搾った果汁ジュースについても同様で、果汁にすると果糖が虫歯のリスク要因にもなります。
何を食べればいいのか
上記の6番の最新の科学的知見を集積した報告書に沿えば、だいたい以下のようになる。

図は「Stephanの歯垢pH曲線」『新予防歯科学3版-上』より引用[57]。
ステファンカーブと呼ばれる曲線で、糖質の種類によって変化する口内の酸性度が違う。さらに糖質の濃度、咀嚼によって出るアルカリ性の唾液によって変化する。
一番右で線が急に直線になっている部分はその線がどの糖類かを図示するための線です。
穀物・炭水化物や糖類:未精製のものが栄養価が高い。戦前には、食物繊維という消化できないものがあるので、少し米を精白したものがよいという問題をめぐって論争がなされた。これは、1980年代ごろまでにはバーキットとトロウェルの発見で食物繊維は有用であるとされ研究も蓄積し、精白されていない玄米のような穀物を食べるということは、各種レポートや先進国で推奨されている。精白されていない穀物は、世界保健機関によれば心臓病のリスクを下げ[38]、ハーバード大学公衆衛生大学院によれば糖尿病のリスクを下げる。厚生労働省によれば、精白された白米のような穀物は、糖尿病や心筋梗塞、代謝異常になり腹部に脂肪が蓄積するメタボリックシンドロームのリスクを上げる[58]。砂糖(ほぼショ糖)は、炭水化物以外をとりさってしまったもので栄養的に貧弱で虫歯の原因となることだけでも控える理由が大きい。砂糖は口腔内の細菌の餌になり歯を溶かす酸を発生させ、酸性度に傾ける度合いが最も大きい。ジュースなど液状の果汁に含まれる果糖も同様に酸性に傾ける[38]。歯磨きとかで歯を掃除しても歯が長期的に酸に浸食される時間を減らすことにしかならず酸の発生自体は抑制できない。したがって世界保健機関は、歯を掃除すると虫歯のリスクが低下するということには明確な根拠がない、と報告している(リスクが低下するのは歯周病である)[38]。虫歯の主因である砂糖の摂取を減らせば虫歯のリスクが大幅に減る[38]。反対に穀物に含まれるデンプンは歯を溶かすほどの酸を出さない[38]。果物も歯を溶かすほどの酸を出さない[38]。
少し話がずれるが、シュガーレスガムは唾液分泌を促進することにより、口腔内をアルカリ性に戻す。世界保健機関はシュガーレスガムを虫歯のリスクを低下させる可能性が高いと評価している[38]。さらに、リン酸オリゴ糖カルシウム(POs-Ca)を含んだシュガーレスガムは、自然状態では数ヶ月以上かかる軽く歯が溶けた状態(初期う蝕)を元に戻す(再石灰化)の期間を1~2週間にまで短縮させる[59]。つまり、砂糖を含んだ飲食物の食後にはシュガーレスガムを噛むのが虫歯予防に効果的である。
タンパク質と脂質:タンパク質の豊富な食品を摂取しようとすれば脂質が含まれるので脂質の問題も同様についてくる。戦前ラットの体重を増やしたので動物性のものがいいとされたが、「米国の食事目標」以降は動物性のものは主として心臓病の原因になるので減らすべきものに分類され、世界がん研究基金の第二次報告ではがん予防のための公衆目標として赤肉週300グラム以内を目標としている。ハムやソーセージには体内で発がん物質となる発色剤の亜硝酸ナトリウムが含まれ、世界がん研究基金は摂取を避けるべきであるとしている。魚類に関しては、健康に寄与するというデータが蓄積されてきたオメガ3脂肪酸が豊富に含まれる。この点だけを見ればマグロのような大型魚類がいいと思われるが、毒性の観点からみれば毒物が食物連鎖に従って生物濃縮されているので小型の魚類のほうがいい。毒物の生物濃縮の考えは、「妊産婦のための食生活指針」[60]において、胎児への影響が考えられる水銀の摂取量を考慮するよう大きな魚は期間をあけて食べるよう勧告されている。肉類の摂取は動物性の食物に多く含まれる飽和脂肪酸を多く摂取することにつながり、これは世界保健機関によれば糖尿病の原因にもなる[38]。動物性脂肪であり常温で硬化しているバターをほかのものに変えるというのはハーバード大学公衆衛生大学院の推奨である。世界保健機関によれば動物性タンパク質による酸性の負荷は、野菜・果物によるアルカリ化が少なければ骨粗鬆症の原因になる[39][40]。世界保健機関によれば、動物性食品の消費量が多いほど骨粗しょう症が多い(ヘグステッドの研究)[39]。豆類は、この体に酸性の負荷をもたらす含硫アミノ酸が少なく[40]、大豆食品は骨粗鬆症のリスクを低下する可能性があると考えられている[38]。動物性の食べ物が、ある種のがんと関連付けられることとは反対に、大豆はいくつかのがんのリスクと心臓病のリスクを下げる。動物性の食物に含まれるヘム鉄は、2型糖尿病のリスクを高め[61][62]、NCIなどの研究によればがんのリスクを高める[63]。動物性脂肪を控えようという勧告であれば脂肪の少ない部位を選ぶということも可能だが、含硫アミノ酸や鉄分までもとなると分離して食べることが難しい。
たんぱく質の品質をあらわすアミノ酸スコアの世界保健機関による主要な改定には、人体が必要とする量に基づかない1957年のプロテインスコアと呼ばれているもの、以降の人体の必要量に基づいた1973年の暫定スコア、1985年に提唱されもう一度それを用いるべきだと再確認された指標とすべき1985年のスコアがある。2007年に新しいスコアが提唱され日本では2010年ごろから使われだすと思われる。大豆は1985年と2007年のアミノ酸スコアでは満点の100点、1973年のスコアでは86点になっている。まだまだ大豆が86点のスコアが至る所で用いられている。どうかするとプロテインスコアを勧めている場合がある。
本協議は、1985年にFAO/WHO/UNUによって就学前年齢児童に対して提示されたアミノ酸スコアリングパターンが、現在において、乳児を除く全年齢グループに対する食品たんぱく質品質の評価に使用される最も妥当なパターンであることを確認した。
(国際連合食糧農業機関編集『たんぱく質の品質評価-FAO/WHO合同専門家協議報告』国際食糧農業協会訳、国際食糧農業協会、1992年。58ページより引用(原著 Protein Quality Evaluation, 1991))
脳の神経伝達物質のセロトニンの原料となるトリプトファンも必須アミノ酸ですから、たんぱく質を供給する食べ物でアミノ酸スコアが100点であれば大差ない量が含まれます。バナナはたんぱく質の多い食料ではないという部分を考えれば、トリプトファンが少ないことはすぐ分かります。
動物性食品は環境破壊の大きな原因の一つとなっているし、日本にあてはめれば食糧自給率の低下とアメリカへの食糧依存を促進する。
卵:ウォルター・ウィレットは、1日1個までならば、統計的に心臓病リスクは高まっていないと説明している[42]。
油・脂質:植物油を硬化させたマーガリンやショートニングなど常温で固体の硬化油は、トランス脂肪酸と呼ばれる心臓疾患に関連する脂肪酸が豊富に含まれ、世界保健機関はトランス脂肪酸は全カロリーの1%を摂取限度とすべきとし、上限が非常に少ない。トランス脂肪酸を含む硬化油は、油をプラスチック化すると呼ばれて加工されたもので腐りにくいため[64]、保存期間を延ばしたり輸送のしやすさから固体にされている。ほかに油の詳細な組成成分は油の種類ごとに大きく違い、たんぱく質源から摂取される油を考慮して健康的なバランスを保つためには、なたね油が理想的と思われる。このなたね油も低温圧搾されていないものは、保存期間を伸ばす目的で一部硬化している場合がある[64]。オリーブオイルも脂質摂取のバランスを整える。オメガ3脂肪酸が多く含まれるマイナーな油を除いてほとんどは油の組成成分のバランスが悪い。
野菜:日本では健康日本21によって1日350グラムを目標としているが、世界がん研究基金の第二次報告では600グラムを公衆目標としているので、多く食べるに越したことはない。世界保健機関は、野菜と果物を、肥満、糖尿病、心血管疾患、がんのリスクを低下させるとしている[38]。
飲料:水分の摂取量についてまとめられた『水分補給-代謝と調節』[65]によれば、水分の摂取基準は個体差や運動量によって差があり基準値ではなく、体が欲し、のどが渇いたときに摂取すればいいと結論されている。ただし、水を飲む頻度のセルフコントロールの効かなくなった病態に多飲症があり、それがすすむと水中毒となり低ナトリウム血症など合併症を起こす[66]。
世界がん研究基金によれば飲み物は水でよく、砂糖の添加されたものは推奨されていない。砂糖は清涼飲料水には10%程度、スポーツドリンクでも5%程度含まれるものが多い。砂糖10%濃度まで歯を溶かす酸の酸性度が高くなり、飲料水は咀嚼しないために、アルカリ性の唾液によって酸を弱めることはできない。世界がん研究基金はがんのリスク要因に肥満があるとし、砂糖のとりすぎを警告している。世界保健機関は、砂糖のような遊離糖類は全カロリー中の10%未満にすべきとし、砂糖や果汁の豊富な飲料は肥満と関連付けられているが[38]、砂糖濃度10%の500mlのジュースを1本飲むだけで大人での許容限度にほぼ近い。
アルコールは、発がん性の観点からは、男性は大腸がんのリスクが高まらない1日2杯まで、女性は2杯以前に乳がんのリスクが高まるので1日1杯までの勧告が多いですね。過剰なアルコールは肝臓疾患、通風のリスクを高めます。適量のアルコールならリスクを下げる病気もあるが、アルコールの量の加減というのは難しいので飲まないに越したことはないと思います。
牛乳:牛乳は、世界がん研究基金もハーバード大学公衆衛生大学院も男性の前立腺がんや女性の卵巣がんのリスクを増加させるとして摂取を推奨していない。それだけでなくハーバード大学公衆衛生大学院によれば牛乳を飲んでも骨折率が低下しない。ウォルター・ウィレットらの結論は、「低脂肪牛乳は、ほぼ確実に、全脂肪牛乳より望ましいものですが、それでもなお動物性蛋白質という負荷があり、それは往々にして必要総量を超えて摂取され、むしろ逆に骨折の危険性を高めるものとなっています
[67]」である。乳牛は妊娠しており二酸化炭素を妊娠していない牛より2倍排出する。
食品添加物:イギリス政府は、保存料の安息香酸ナトリウムといくつかのタール色素によってADHD(注意欠陥・多動性障害)のリスクを高めるとし[68]、EUでこれらのタール色素について子供に影響があると警告表示することが計画されている[69]。しかし、日本の現状では、ペプシあずきのように砂糖が10%程度入っており、砂糖自体が保存料となるため保存料が必要ないように思えるにもかかわらず、イギリス政府が警告する安息香酸ナトリウムとタール色素の赤色40号が同時に入っているという飲料が販売されている。
グルタミン酸ナトリウムは、アメリカの「米国の食事目標」に「『栄養成分表』で食べないように勧告されているものだ」と書かれている[70]。
合成甘味料は、少量でケミカルな甘みをつけ、虫歯のリスクもなく、カロリー摂取量が減少するため適度の減量に関連する[71]が、ウォルター・ウィレットによればこういうものを摂取してきた歴史がないため、何が起こるかはわからない。脳は、人工甘味料に対して甘みを知覚するが、砂糖とは違いカロリーのあるエネルギーが入ってきたときのような反応を示さない[72]。2010年の大規模調査では、1日1本の代替甘味料のドリンクで妊婦の早産のリスクが38%高まると報告された[73]。
どのくらいの割合で食べればいいのか
まず世界保健機関による推奨量の配分を見ていく。
人々の栄養素摂取目標の範囲[74] 食事要因 目標(別の方法で示されてなければ、総エネルギーに対する%) 総脂肪 15-30% 飽和脂肪酸 <10% 多価不飽和脂肪酸(PUFAs) 6-10% n-6多価不飽和脂肪酸(PUFAs) 5-8% n-3多価不飽和脂肪酸(PUFAs) 1-2% トランス脂肪酸 <1% 一価不飽和脂肪酸 (MUFAs) 差分 a 総炭水化物 55-75% b 遊離糖類 c <10% たんぱく質 10-15% d コレステロール <300mg/日 塩化ナトリウム(ナトリウム) e <5g/日(<2g/日) 野菜と果物 ≥400g/日 総食物繊維 食品から f 非デンプン性多糖類(NSP) 食品から f
- a このように計算される:総脂肪 – (飽和脂肪酸 + 多価不飽和脂肪酸 + トランス脂肪酸)
- b 脂肪とタンパク質の摂取を考慮した後に利用できる全エネルギーに占める割合、ゆえに範囲が広い。
- c ここでいう「遊離糖類」とはメーカー・料理人や消費者によって食べ物に加えられたすべての単糖類と二糖類に加え天然に存在する糖類のはちみつ・シロップと果汁である。
- d 推奨されている範囲は2002年4月の9日から16日かけてジュネーブで開催された Protein and Amino Acid Requirements in Human Nutrition についての the Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation を考慮すべきです。(
2) - e 塩は適切にヨウ素添加されるべきです。(
6) 実際のナトリウムの摂取とヨウ素の状態の調査に応じて調整したヨウ素添加塩が必要であると認識すべきです。 - f 58ページの「非デンプン性多糖類」を参照。
世界保健機関は、野菜と果物の推奨量の摂取と精白されていない穀物である全粒穀物の摂取によって1日に20グラム以上の非デンプン性多糖類が摂取できそうだとしている[38]。遊離糖類と飽和脂肪酸は10%までとなっているけど、1989年の勧告では0-10%と書かれていたものです。少なくていいというのが分かりやすい。
栄養の本領発揮
もし
夫 れ自己を全ふして大自然に仕ふるの道、これを栄養に於て先づ眼覚めさせることから出発す可べきであることが悟了させらるゝに足れば更に妙である。
(佐伯矩『栄養と嗜好』大日本私立衛生会、1931年。42ページより引用。筆者まぼろしが現代漢字に変更。)
関連記事
参考文献
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外部リンク
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