本物の大麻を着る / 薬用大麻・幻覚剤の時代 未分類 by まぼろし - 2022年5月5日2022年9月28日0 一時期に見まくっていたアニメは見なくなったけど、Sonny Boy という不思議で緩いアニメは面白かった。ドラッグ情報も10年以上ずっと読んでるから、今は興味がない時が多いけどニュースとかを調べてみます。これらの問題の根底は、事実と法律の違いですね。情報の時代、科学的根拠の時代が法律など世界を大変革していっている。 本物の大麻を着る 本物の大麻の洋服は少ない。原料が「麻」という大きな括りだと、絹が混ざっていたり、大麻(たいま、ヘンプ)ではなくて亜麻(あま、リネン)の製品も多いから細かく確認しないといけない。着物とか和装の素材では、苧麻(ちょま、ラミー)もある。 これら麻素材はひっくるめて、通気性がよくて涼しい素材で暑い季節に向くと知られているけども、大麻布では冬にも使われると知られている。 2015年にエイベックスらが開発し、伊勢丹が商品化した「麻世妙」(まよたえ)という大麻の布がある。麻は春夏向け素材だと知られるが麻世妙は保温性もあり秋冬にも展開、として紹介されていた ((大麻で紳士婦人服 三越伊勢丹HD、新ブランド展開”. 日経MJ(流通新聞): p. 7. 2015年4月3日))。確かに冬用のジャケットにもよく使われていた。 麻布は肌着に冷たく当って、防寒の用には適せぬように思われるが、細かい雪の降る土地では、水気の浸みやすい木綿を着るのはなお不便だから、いわば我々の雨外套のかわりに、麻布を着て雪を払っているのであった。 柳田国男『木綿以前の事』 麻世妙が出てきて数年、全体の半分くらいは大麻とか部分的に大麻のものが多かったし、伊勢丹系列でめちゃ高かったし、個々のブランドに見に行ってもあまり置いてない。あと麻世妙のタオルなどファブリックも出すと言っていたけど出てこない。代わりに、2017年には以下の、Ruderalsっていうブランドの大麻100%のTシャツが、Amazonから6000円くらいで買えたんで、年中毎日着ていたんです。今は売っていない。大麻や麻の布は、編み目が粗いから夏はスーッと風が通るんで涼しい。上のような解説を読んでいたんで、冬でも下に着てみると、湿らないし寒くもならないという感じでちょうどよかった。 Ruderals ヘンプ100%Tシャツ - Amazon Tシャツは完売し2020年からソックスとのこと。 2021年になって麻世妙のTシャツが販売されている。https://majotae.com/ 19800円か58300円でかなり高い。日本産大麻100%使用。大麻布の展開と流通はゆっくりに感じるけど、進んでいっているのは嬉しい。 こういう布をはじめとした薬用ではない産業大麻では、20世紀半ばには数万人いた生産者が、日本ではなぜか絶滅しそうなくらいに減っている。1934年に10,000ヘクタール、2012年ごろでは5ヘクタールしかない((松田恭子「今から始める大麻栽培」『農業経営者』2012年9月号))。諸外国では数千、数万ヘクタールを生産してる。 一番古くから話すと、神道では作物の豊穣を祝ってご飯を捧げるんです。同じように布も捧げるんで、古代は麻系の布しかなかったし、重要だったり伝統があるほど古式そのままの儀式をやる。天皇陛下も米の苗を植えるように、大麻は種まきから三木家がやることになっている。 https://www.youtube.com/watch?v=BVRVrAO5PSw 「大嘗祭<だいじょうさい>で献上、麁服<あらたえ>に使う麻の種まき 桜満開の徳島で」、2019年4月9日、朝日新聞デジタル。 伊勢麻・振興協会というのがあるけど、中心的神社の伊勢神宮でも伊勢産の大麻を使いたいということでしょう。大麻生産を絶滅しようにも、日本では神様の側にあったからという、核の部分の戦いとしてこんな興味深いものはない。伊勢神宮では違う漢字があてられて荒妙<あらたえ>の着物を作ります。何年も前から申請の交渉の結果で伊勢で栽培されていて、このたび栽培地を増やそうとしたら高額なフェンスをつけるなどの条件をつけられた、と。 椎谷哲夫「三重県が厚生労働省方針の内容を逆に伝える文書を作成 大麻栽培規制を巡り県議への説明に使用」、2022年5月2日、東京新聞。 「「大麻」活用へ勉強会 安倍元首相ら」、2022年4月27日、時事通信。 外国では何千ヘクタール以上と今なお生産されているのに、日本では5ヘクタールとかまで、もう少しで絶滅するところまできている。なぜ外国では生産できるのかというと、国際条約で産業大麻は規制されていないので、規制される根拠がまったくないからです。日本でも大麻取締法で免許制としている。日本は潔癖症でこの免許を絞りに絞って、ほとんど誰も生産できないところまで行ってしまったんですね。このニュースにもあるよう、最近は、厚生労働省も緩和しろと言っているみたいだ。 また同時期に自民党有志による、麻の活用勉強会が発足、最高顧問に安倍晋三・元首相がついたということでまた進展しそうです。伊勢麻のTシャツとか、スピリチュアル好きな人に売れそうな気もするんですけどね。 規制されているTHC https://www.youtube.com/watch?v=zaBp1Jh3Bkc 薬用としての大麻、こっちも個人的信念とか、健康福祉の自由とか宗教戦争の様相ですね。大麻の規制されている成分はTHCです。このTHCが含まれている薬用大麻も、国連が2020年に大麻を「最も危険」な分類から削除したんです。国連の分類から国際条約が生まれていて、国際条約から各国の法律が生まれているので、今度は各国は自分の国の取締法を見直さないといけないんですね。カナダの大麻合法化など、先に見直してきた国もあります。ジャマイカでは、レゲエの信仰の自由の大麻を許可しました。簡単な薬物所持のような軽犯罪は罰金など非犯罪化の対応をしよう、というのも国連の新しい考え方で、持続可能性を重視したやり直しの効く社会を作るためです。 何が起きたかというと、大麻に医療用途がないのでひたすら規制しようというのがなくなって、医療大麻が承認されたということです。大麻の「害悪のある成分」とかでなくて、「乱用性のある薬用成分」に価値認識が国際的に格下げになったということです。大麻は娯楽的に楽しかったり、抗不安効果とかもあるので乱用はされやすいけど、依存性や致死性では比較的安全な薬物だとされている。なので、条約とかの「危険」というのは、「乱用の危険性」です。これは「致死性」とか「依存のやっかいさ」とか、本当の重要な危険性とかけ離れている、分類上の呼び方としての「危険」ということです。 国際条約の分類方法 医学用途が知られていない という意味での 「最も危険」という呼び方 スケジュールI 大麻の国際条約ではスケジュールIV 乱用性が高い という危険性がある・医学用途はある スケジュールII 大麻の国際条約ではスケジュールI 乱用性がない・医学用途はある スケジュールIII WHO Expert Committee on Drug Dependence 世界保健機関・依存性薬物専門委員会の報告書 この報告書の体裁が、物質ごとに、依存および乱用性があるか、医療用途があるかを調査し「なのでスケジュール〇〇の分類を勧告する」となっている。致死性とかも少しは書いてあるけど、主にそうなってる。 日本での医療大麻の合法化議論では、国際上なんの規制もないCBDを中心になりそうな感じはある。でも本来はほかの鎮痛薬の副作用の強さから、THCを含めた医療大麻という、効果がありつつ副作用の有利な薬が発見されてきているわけです ((Schlag AK, Hindocha C, Zafar R, Nutt DJ, Curran HV (2021). “Cannabis based medicines and cannabis dependence: A critical review of issues and evidence”. J Psychopharmacol
あたらしい世界へ 未分類 by まぼろし - 2021年5月5日2021年5月5日0 池袋シネマサンシャインの12F、日本最大のIMAXで映画シン・エヴァンゲリオンを見た(完全対応ではなく横長画面だったけど)。というか、それまでエヴァをじっくり見たことがなかった。2020年から「エヴァの新映画公開するする詐欺」が2回あったので、2回も「映画を見に行くならアニメからじっくり見なきゃ~」と思ってほぼ全てのエヴァの動画を見る余裕ができ(細かいバージョン違いがあるのは飛ばして)、それだけ見ても意味が分からないアニメだった。さらにオリラジ中田のエヴァ解説4時間Youtubeを見て、万全の状態でこのシン・エヴァを見た。(それに比べてギャグアニメの映画・銀魂ファイナルは不完全状態で見た・アニメだけで367話もある) 主題歌は、宇多田ヒカル One Last Kiss https://www.youtube.com/watch?v=0Uhh62MUEic 寂しくないふりしてた まあ、そんなのお互い様か 誰かを求めることは 即ち傷つくことだった こういう歌詞があるけど、主人公たちは完璧なヒーローではなく複雑な親との関係の中にいる。そういう暗い場面が好きじゃなくてじっくり見てなかった。この歌詞はアニメの中では特にシンジのことだろうけど、多くの人が自分と重ねて見たり、そうでなくてもそれが分かるような描写だから面白くなってくる。みんな弱さを隠そうとして、ずれてしまって人とぶつかる。 男性的なゴツゴツしたロボではなくて、エヴァという乗り物は流線型で、生物で獣のように暴走することがある。アニメは20話あたりからエヴァの戦闘ではなく、精神世界のぐちゃぐちゃを描き出すんだけど、これもそれまでのアニメとは違うんだろう。斬新だったんだろう。幻覚剤が世にあふれ、心の世界に焦点が当たったのが90年代でこの時代のアニメだ。この精神世界ぐちゃぐちゃの展開も、敵の使途の攻撃だったと解釈される。いつしか敵は物理的ではなくて精神的に攻撃をしてきた。暗い感じで、最終回26話では、何もない世界に行ってしまう。仏教の小さい悟り。仏教用語で空無辺処など。それは小さな救いの要素。何もない世界は、すべてはひとつなんだけど、やはり何もない。そこから他人がまた出てきて(仏教の縁起)、アスカが「やっと分かったの?バカ、シンジ」と叫んで平凡な日常が再開する。自分がここに居ていいんだ、って、戻ってきたのが平凡な日常。アニメっぽいな終わり方だとは思うけど。 この最終回を長時間にして描きなおした20世紀最後の映画が、劇場版「Air/まごころを、君に」(1997年)で、サイケデリックに、もっとバットリップのような世界にぶっ飛んでいる。ヴィジュアルでは「聖とグロテスク」、内容では精神のぐちゃぐちゃ、主体と客体の混合、また無へと極まってから、そこから再び他者を求めて、縁起で現実に帰ってくる。「The end of evangelion One more final: I need you.」とテロップが出てきて、「エヴァの終わり、もうひとつの終わり: あなたが必要」だと思うんだけど、また最後にはアスカが出てきてシンジは泣くんだ。いろいろ解釈はあるけど、わけの分かんない他者がまた現れた世界が嬉しくて泣いたんだと思う。個人的にそう思ってる。 この最後の映画から、新たに10年後に新劇場版がはじまり、ストーリーが変わらない「序」から、徐々にストーリーに変化が現れ新キャラのマリが出る「破」、意味不明な「Q」まで進んだ。だから新劇場版だけでも一応完結はする。「Q」からは、特に幾何学的に動く機械が現れるようになってヴィジュアル的に「聖とグロと幾何学」へとブッ飛び要素が増える。マリが出てきたんで、最近のアニメのテーマによくある繰り返し(やり直し)の要素が入ったと解釈される。俺たちは何度もこの世界を少しづつ変えながらやり直す。これが合わさったのが、今回の最後の「シン・エヴァンゲリオン」で、「Air/まごころを、君に」を超える展開、もうこれまでとは違う展開になっていく。ついにシンジの親父のゲンドウまでトリップしだす(オヤジまで幻覚剤を飲んだかのように)。みんなでトリップしつつ、心のロックが深いところで氷塊していく。これはもう上手くいった幻覚剤トリップのような。希望にあふれる終わり方になっていて、ここまでのぶっ壊れた感じはなかなかないだろうっていう、伝説的なアニメとして完結した。 幻覚剤や薬物の新刊 マイケル・ポーラン『幻覚剤は役に立つのか』 『幻覚剤は役に立つのか』(原著2018年)は、デヴィット・ナットなど現代の幻覚剤の研究者も紹介され、現行の科学での幻覚剤の作用の仕方の解説のある本です。そろそろ欧米で幻覚剤が医薬品として販売されてくるので、そういう前提にある本。 デフォルトモードネットワークの説明もある。これは雑念のことだと解釈しているけど、特に何にも集中していない時(あとは寝る前)にふらふらとさまよいだす心のことだと思うけど、思考がダラダラとさまよっていて延々とよくない思考を繰り返したりする。幻覚剤の使用後には、ここに変化を与えていて、うつ病などに持続的な効果があると現代的には解釈されている。 で、この本には関係ないけど、これを止めるには何も幻覚剤だけでなくて、気づいて停止すること(この能力は仏教的には伸びることになっている)、前向きになったり(ポジティブ心理学が勃興しているのでそれ調べると良い)、気分転換をすること、何かに集中すること、快感のある薬物(カフェインでもアシュワガンダでもそうだ)でごまかすこと(以上のような依存性・副作用の少ないものがいい)、気心の知れた人との談話や触れ合いによるオキシトシン分泌から、セックスでも同じ要素かと。 ヨハン・ハリ『麻薬と人間 100年の物語』 『麻薬と人間 100年の物語』(原著2015年)は、薬物全般が対象で、古い禁酒法の時代から規制薬物(当時は酒の密売)がマフィアの資金源となり規制が逆効果を生んできたという内容で、最近のアメリカでの大麻の非犯罪化まで話題を連続させている。強引な規制が薬物以上に破壊的な結果をもたらしてきた。 2020年後半では、薬物規制条約の中で、大麻は「最も危険」(ほぼ利用不可のような)という分類から一段階下がった(乱用に気をつければ利用できる)。こうした流れで世界的にもオピオイド(厳密にはこれが麻薬、摂取量を間違えると死ぬ)が減って、大麻(摂取量で死ぬことはない)が増えてきた。 それ以外では、国連が持続可能な開発目標(SDG)ということを言い出して、政策や企業の動向を決めるのに非常に重要になっている。化粧品でも欧米ではクリーンビューティーが勃興してきて、持続可能性に配慮した製品を作るブランドが注目されてきている。薬物政策について国連は、人権を重視しよう、簡単な薬物所持のような軽犯罪は逮捕ではなく罰金など非犯罪化の対応をしよう、人権を重視して犯罪者として扱わず、治療し、社会に再統合させよう、など大きく方向転換している。人間も持続可能なように薬物政策をとろうということですね。壊れていく世界と、やり直そうとする世界。希望が見えるのはどっち。