アルバート・ホフマン(Albert Hofmann、1906年 – 2008年)は、サイケデリックスのLSDを合成したことで有名なスイスの化学者・薬理学者である。ノーベル賞委員会会員(ノーベル賞受賞者を選ぶ立場)、世界科学アカデミーメンバーをつとめた。![LSD プロブレムチャイルド&ワンダードラッグ [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51f0XQ3Li-L.PA5,5,5,10_SL150_.jpg)
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ホフマンは、幼いころ森の中ですべてが美しく見えるという神秘的な体験をした[2]。
1929年春、チューリッヒ大学で化学を修了し、スイス・バーゼルのサンド・A・G社(現・ノバルティス社)へ入社する[3]。
20世紀初頭、製薬会社が薬の合成を競い合っており、麦角から有効成分が抽出されていくなか、麦角の基本構造はリゼルグ酸と名づけられた。麦、特にライ麦に繁殖する麦角(エルゴット、Ergot)の語源はオス鶏の爪をあらわすフランス語で、このカビが麦に繁殖すると黒い角-ツノ-とか爪に見える[4]。麦角を食べると生殖に悪影響し、また幻覚が起こり中世では魔女に魔法をかけられたとして魔女裁判が起こった[4]。死者を出す麦角病にもかかる。記事サイケデリックスのほうに、もう少し。
ホフマンは、スイスのサンドス社で、リゼルグ酸から合成物をさまざまに作り出し、ホフマンの最初の功績はリゼルグ酸とプロパノールアミンを結合させることによって合成したエルゴバシンで、子宮収縮、子宮止血剤として「メテルギン」として発売され、これは現在でも使われている薬である。偏頭痛薬のジヒデルゴットの合成、ホフマンが1940年代に麦角から合成したヒデルギンは、脳内の血液循環を向上させ、脳血管の障害にアメリカ食品医薬局が効用を認可している[5]。
1938年にはリゼルグ酸による25番目の合成物「LSD-25」(リゼルグ酸ジエチルアミド)を合成する。これが後にLSDと呼ばれるものである。この時点では動物実験でたいした反応が見られなかったためそれ以上研究が行われなかった。
1943年、5年前より研究方法が進展していたので再びLSD-25をとりあげて研究しようとしたとき、おそらくホフマンの指から微量のLSD-25が吸収され幻覚を見てサイケデリック体験が起きた。そして、自分をモルモットにした実験を決意するのである。
私は麦角中毒の毒性についてよく知っていたので、きわめて几帳面に、かつ清潔な状態で実験を行うことを常としていたのであり、おそらく非結晶性のLSDの溶液のほんの微量が私の指先につき、指の皮膚を通して吸収されたものであろうと推測できるだけである。(中略)私はこの推論にもとづいて、私自身が再び被験者となって研究を推し進める決意をした。
(A・ホッフマン『LSD-幻想世界への旅』堀正訳、榎本博明訳、福屋武人訳、新曜社、1984年。ISBN 4788501821。20ページより引用。(原著 LSD-MEIN SORGENKIND, 1979))
そして、「デリシッド(Delysid)」という商品名で発売された。
1950年代後半、JPモルガン銀行の副社長でアマチュアの菌類研究家のロバート・ゴードン・ワッソンが、南米で見つけたマジックマッシュルーム(幻覚性キノコ)から有効成分を特定するのに難航しており、同じような幻覚を起こすLSDを発見したホフマンに特定を依頼し、ホフマンは抽出に成功し有効成分をシロシン・シロシビンと名づけた。このキノコの正式名称はシロシベ・クベンシスで、和名はミナミシビレタケである。
ほかにも南米のオロリウキというヒルガオの種子から幻覚成分のリゼルグ酸アミドを抽出している。この有効成分はホフマンが15年前に化学合成した物質の天然に存在するものであった[6]。
ホフマンの探究心は、ギリシャで2000年間続いたエレウシスの儀式でLSDのような麦角に発生した物質が使われていたのではないのかという仮説につながり、1978年にはロバート・ゴードン・ワッソンと共に『エレウシスへの道』(邦訳なし)[7]という著作を出している。1979年に、『LSD-幻想世界への旅』を出版したときには、LSDは瞑想を物質的に補助するために使われるべきであるとしている[8]。そして、瞑想は創造主と被造物という関係に一線を画し、そうした断絶を克服するものだと主張し、合理的な考え方はこうしたものがみせるカオス的な出来事を締め出してしまっているが、カオスを容認することで生き方を再発見できるのではないかと主張している[9]。
1993年には、ホフマンは以下のような信念を持っていた。
LSDによる洞察はもうすでに体験済みなのでこれ以上必要だとは思いません。その洞察にもとづいて、わたしは[オルダス・]ハックスレーがかつて手紙に書いてきたことをしなければなりません。それは、「幻視的体験によって身につけたものを、愛と知性によって日常生活にもたらすべきだ」というものです。それが現在のわたしの仕事なのです。
(A・ホフマン「LSDの父吠える A・ホフマン」遠藤徹訳『ユリイカ』1995年12月、72-80ページより引用。)
1999年、スイスのバーゼルで「意識の世界」会議が開かれたときには、毒性や依存性のないLSDを瞑想センターで摂取し宗教的な畏敬の念を起こすために使われることを期待していた[10]。
2001年、ホフマン が95歳の時には、LSDは精神的な面を忘れがちな現代の社会に精神的な架け橋を渡すものであり、また精神障害の治療に有効なので使用を認めるべきだという見解を示している[11]。
2006年、ホフマンは100歳になり、LSD国際シンポジウムが開かれた。ホフマンは、物質主義的な今の世界に精神や自然に心を開かせるサイケデリックスの触媒としての効果を訴え、古来から伝統的に用いられてきた意識の変革剤を用いる場が現在ではなくなっていると憂いた。
2007年、LSD、シロシビン、メスカリン[12]等のサイケデリックスは、自己認識や精神療法、自然との一体感を感じることに寄与するため、現在の地球規模の危機を解決するため適切な形で社会に導入されることになる可能性を望んだ[13]。
2008年、102歳で死去。
アルバート・ホフマン・ファウンデーション
1954年から1962年まで自身もLSDによる研究をしていたオスカー・ジェニガーはLSDに関する膨大な資料を集めた情報センターを創設しており、LSDの発見者に敬意を表してアルバート・ホフマン・ファウンデーションと名付けられている[14]。
参考文献
- A・ホッフマン『LSD-幻想世界への旅』堀正訳、榎本博明訳、福屋武人訳、新曜社、1984年。ISBN 4788501821。(原著 LSD-MEIN SORGENKIND, 1979)(全文公開)
- A・ホフマン「LSDの父吠える A・ホフマン」遠藤徹訳『ユリイカ』1995年12月、72-80ページ。
- ジョン・ホーガン「第8章 LSD 誕生の地で」『科学を捨て、神秘へと向かう理性』竹内薫訳、徳間書店、2004年11月。201-228ページ。ISBN 4198619506。(原著 Rational mysticism, 2003)
メディア
- 『LSD プロブレムチャイルド&ワンダードラッグ』UPLINK、2008年。ISBN B001BZUABC。(公式サイト)
外部リンク
- アルバート・ホフマン博士から若いみなさんへのメッセージ(Entheorg)
- 4月19日自転車の日(BICYCLE DAY) – アルバート・ホフマン博士のLSD実験レポート(Entheorg)
- LSDを学問的に論じる国際シンポジウム(上) (WIRED VISION、2006年1月19日)
- LSDを学問的に論じる国際シンポジウム(下) (WIRED VISION、2006年1月19日)
- 100歳を祝うLSDの生みの親 (swissinfo、2006年1月12日-15:30)
- 「LSD」の生みの親、アルバート・ホフマン博士が死の2年前に残したメッセージとは(webDICE)
- LSDの父、アルバート・ホフマン博士死去 (omniverse)
- 正式発表|LSDの父、アルバート・ホフマン博士死去 102歳(Entheorg)
- RLL33 ホフマン博士100歳誕生日記念(RLL) お茶目なホフマン、80歳の誕生日に右手に霊芝(マンネンタケ)を持ちながら太極拳をしている[15]。いい顔してます。
脚注
- ^ <ref>LSDを学問的に論じる国際シンポジウム(上) (WIRED VISION、2006年1月19日)より引用。</ref>。
- ^ <ref>A.ホッフマン『LSD-幻想世界への旅』ISBN 4788501821。 i iiページ。</ref>。
- ^ <ref>A.ホッフマン『LSD-幻想世界への旅』ISBN 4788501821。 2ページ。</ref>。
- ^^ <ref>メアリー・キルバーン・マトシアン『食物中毒と集団幻想』荒木正純訳、氏家理恵訳、パピルス、2004年。ISBN 4938165295。24-33、114-115ページ。(原著 Poisons of the Past: Molds, Epidemics, and History, 1989)</ref>。
- ^ <ref>B・ポッター、S・オルファーリ『ブレイン・ブースター-頭をよくする薬、ビタミン、栄養素、ハーブ』オークラ出版、1999年10月。ISBN 4872785207。62-63ページ。(原著 brain boosters, 1993)</ref>。
- ^ <ref>A.ホッフマン『LSD-幻想世界への旅』ISBN 4788501821。38ページ。</ref>。
- ^ <ref>Albert Hofmann, R. Gordon Wasson, Carla P. Ruck, Robert Forte編, Huston Smith・序論 The Road to Eleusis: Unveiling the Secret of the Mysteries, 1978 ISBN 0151778728</ref>。
- ^ <ref>A.ホッフマン『LSD-幻想世界への旅』ISBN 4788501821。262ページ。</ref>。
- ^ <ref>A.ホッフマン『LSD-幻想世界への旅』ISBN 4788501821。260、266ページ。</ref>。
- ^ <ref>ジョン・ホーガン「第8章 LSD 誕生の地で」『科学を捨て、神秘へと向かう理性』竹内薫訳、徳間書店、2004年11月。ISBN 4198619506。222-223ページ。(原著 Rational mysticism, 2003)</ref>。
- ^ <ref>LSDの発明者、ホフマン氏を訪ねて(swissinfo, January 12, 2001)</ref>。
- ^ <ref>ペヨーテ・サボテンの幻覚成分</ref>。
- ^ <ref>『スペクテイター〈19号〉』エディトリアルデパートメント、2008年。ISBN 4344950763。106ページ。</ref>。
- ^ <ref>デビッド・ジェイ・ブラウン、レベッカ・マクレン・ノビック『内的宇宙の冒険者たち-意識進化の現在形』菅靖彦訳、八幡書店、1995年。ISBN 4893503200。297ページ。(原著 MAVERICKS OF THE MIND, 1993)</ref>。
- ^ <ref>B・ポッター、S・オルファーリ『ブレイン・ブースター-頭をよくする薬、ビタミン、栄養素、ハーブ』オークラ出版、1999年10月。ISBN 4872785207。64ページ。(原著 brain boosters, 1993)</ref>。
- 新しい: ビート・ジェネレーション
- 古い: オルダス・ハクスリー
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