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心理学―その全外観の物語

心理学(サイコロジー、psychology)は、心に関する学問である。
psychology – maboroshi edition.

psychologyは、心を意味するpsyche(プシュケ)と学問も意味するlogos(ロゴス)の組み合わせとなる。1734年、ドイツの哲学者のクリスティアン・ウォルフ(Christian Von Wolff、1679年 – 1754年)が 心理学(pshicologia)という言葉をはじめて用いた [1]

概要

紀元前から、哲学者によって心に関する考えが繰り広げられてきた。18世紀にメスメルによって体系化された催眠が行われるようになると精神疾患の治療が行われるようになり、19世紀後半には実験をともなった科学的な心理学が開始される。20世紀に入ると、フロイトの無意識の発見による精神分析と、刺激と反応を客観的に観察し科学性が重視された行動主義心理学が勢力を伸ばしはじめる。20世紀半ばには、精神疾患を治すだけではなく人間の成長の可能性を追求し自己実現を目指す人間性心理学と、さらに科学性を増した薬理学脳科学認知心理学が発達していく。20世紀後半には、意識の発達可能性が追求され個人的なものを超えた成長を視野に入れたトランスパーソナル心理学が誕生する。トランスパーソナルとは、自己を超えた意識であり、究極的には自己と他者や自然との境界を超え融合するということである。このとき、人間が利用するものとして神が与えた自然というキリスト教神学の教義 [2]が崩れ去ってしまう。マインドフルネス(気づき)という状態を保つという仏教の禅修行そのものである手法が精神疾患の治療に効果をあげている [3]。外部に神と天国を想定するキリスト教神学よりもむしろ仏教のような無神論、あるいは自己の内部に神を見つけるということになればローマ・カトリック教会の教義 [4] [5]に反してしまうということになる。

読解力としての心理学の位置づけ

II クライエントの言葉を戦略的に使用する
(中略)
その理由のひとつとして、何よりもまず、クライエント自身の言葉を使用してクライエントに反応することができれば、治療関係を築くうえでのアドバンテージとなる。(中略)クライエントの言葉を受け入れることによって、クライエントに対する尊敬を表現し、そのことがクライエントをエンパワーするのである。すなわち、それによってセラピストは、「私は、あなたの見方に対して、尊敬の念を抱いているし、あなた自身の言葉を使って議論している」と暗黙のメッセージを伝えることになるわけである。
 クライエントの表現を戦略的に用いる理由はもうひとつある。そうしたかかわりが、今後の治療において、クライエントの内的世界に入り込むのを、多少とも容易にしてくれるということである。(中略)相手の話しぶりに合わせた言葉遣いは、共感的行動のなかでも、もっとも基本的かつ肯定的ニュアンスを持った行動である。
(B.W.ウォルシュ『自傷行為治療ガイド』松本俊彦訳、金剛出版、2007年。ISBN 978-4772409568。93ページより引用。(原著 TREATING SELF-INJURY: A Practical Guide, 2006)強調は筆者まぼろしによる)

これは、なにもセラピストだけでなく、テキストを読む場合、テキストを書く場合に普遍的にあてはまる技術である。文脈を読解する力というのは、まず言葉の用法と、その論理的展開を解釈することによってから生じる。他者の話し言葉であろうと、テキストに書かれた文章であろうと、まずこの点を理解することなく他者の内部世界を理解しようとすれば、非常に困難な作業となってしまうであろう。したがって、何よりもまず他者の言葉を吸い込むのである。そして、敬意を抱くのである。これは、読解力の心理的な側面である。

近代的な心理学の誕生以前

哲学=知への熱愛

ギリシャ哲学者アリストテレス(Aristoteles、あるいは、アリストートル:Aristotleと呼ばれることもある、前384年 – 前322年)の『霊魂論』で理性は人間のみにあると語られて以来 [6]、近代まで西洋哲学では、一般的に人間には心があるが、動物には理性がないので機械的に動いているだけで心は存在しないと考えられていた。

その後、ギリシャ・ローマ帝国は没落し、キリスト教徒はギリシャ語のアリストテレスの著作を見つけ何世紀も研究し、1200年代にトマス・アクィナス(Thomas Aquinas)がローマ・カトリックのキリスト教神学と融合した [7]
また、作家のオルダス・ハクスリーの指摘によれば、西洋では身体と心をわける考え方が、アリストテレスなどのギリシャ哲学とともに始まり、カトリックへと続き2000年も続いた [8]。この伝統は、感情が身体組織に影響を与える、またその逆の影響などの考え方を曖昧にしてしまったということである [9]

真実を探求する衝動

しかし、1500年代には、ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei)が、その頃生まれた望遠鏡によって天体の実験観察による数学を創始し、アリストテレスの物理学の誤りを指摘する [10]。次に、アイザック・ニュートン(Isaac Newton、1643年 – 1727年)が、ガリレオの研究を発展させ天体などの運動法則を数学的な記述に還元した結果、神の概念を必要としなくなってしまった [11]。ニュートンの親友で哲学者のジョン・ロック(John Locke、1632年 – 1704年)が、『市民政府』 [12]でニュートンの科学的発見を土台として人間の平等や自由、主権が人民にあることを訴えフランス革命における王権社会の撤廃や、また『寛容に関する書簡』 [13]が公開されはじめると、魔女狩りや異端者の住む異国を植民地化するキリスト教社会において信仰の自由や思想の自由の下地となった。

つまり、西洋キリスト教圏では科学と哲学はキリスト教の神の概念を説明するための学問であって、ニュートンの物理学を発端とする近代科学に発達するまで、これらの学問に分離はなかった。近代科学が発展するにつれ、アリストテレスに土台を置くキリスト教神学とは矛盾が広がっていった。

哲学者のラルフ・ワルド・エマーソン(Ralph Waldo Emerson、1803年 – 1882年)は、ハーバード大学とハーバード大学神学校で学んだ後、新プラトン主義グノーシス主義を研究し、神との契約を信じる一般的なキリスト教を否定し自己の内面に神を見つけよとハーバード神学校で講義したため28年間学校から追放された [14]。欧米について分析するとき、このローマ・カトリックによるキリスト教神学からの圧力を考慮することは必須である。さらに、哲学の影響も多大である。

催眠

催眠(hypnosis:ギリシャ語で眠りを意味する [15])は、メスメル(1734年 – 1815年)が学術としてまとめた。メスメルは、動物磁気という水に蓄えることができるエネルギーの理論で病気の治療をウィーンではじめたが、キリスト教会からの反発を受け1778年にはフランスのパリに移り治療を継続し、しかしパリでもルイ16世がこれを禁じたため、ドイツに行きメスメルの名は忘れられていった [16]

この磁気の力もまたきわめて精妙な実体から流出するという性質を持っている。この実体を磁気論者は意志と思念によって方向付づけ統御するのである。(中略)注意深い実験によってこれまでに確認されてきたことであるが、この磁気の力はそれが向けられた物体の中でそれ自身の特殊な波動ないし音響を再生産する傾向がある。そしてこの対象物はそのときこの磁気を投射した人と親密な心霊的共感つまり「ラポール」に入る。こうして動物磁気はいろいろな形態の心霊治療の基本となる。いわば治癒力は磁気自体の中にあり、同時にその媒体を通じて肉体に働きかけることができるさらに微妙な諸力を運ぶ役割をもっているのだ。
(W・E・バトラー『魔法入門-カバラの密儀』 大沼忠弘訳、出帆新社、2000年。ISBN 978-4915497605。60-61ページより引用。(原著 Magic, its Ritual, Power and Purpose, 1952 and The Magician, his Training and Work, 1959)強調は筆者まぼろしによる)

しかし、この動物磁気説(メスメリズム)は忘れ去られることなく治療行為が継続され催眠として研究されていった [17] [18]。催眠では、行動の変化が起こりやすいトランス(trance)状態という意識の状態が重視されるが、トランス状態には4種類の入り口があり、一つはリラックス状態、ほかには何かへの没頭、またあることをやりながら別のことを同時にやるという自動で行動できる状態、残る一つはリズムやパターンが繰り返されることが入り口となる [19]。このとき暗示することで行動を変えることができる。現代では、ミルトン・エリクソン(Milton Erickson、1901年 – 1980年)の研究によって、直接的に暗示をするより間接的な話し言葉の方が、意識することなく行動に影響している無意識にアクセスしやすいことが追及され [20]、直接的な催眠に抵抗を示す人に対しても会話だけでトランス状態にもっていくことができる [21]

心理学のはじまり

心理学実験の開始

そして、サイケデリック研究のはじまり

はじめて心理学実験を開始したといわれるのは、アメリカのハーバード大学で心理学者として出発したウィリアム・ジェームズ(William James、1869年 – 1949年)である [22]。1875年にアメリカではじめての心理学の講義を始め実験室も設置した [23]。つまり、アメリカの心理学の父である。1890年に12年間を費やして書いた大著『心理学原理』(邦訳なし)を出版し、その2年後にその短縮されたものである『心理学要論』 [24]を出版し [25]、序文は心理学を追求すれば哲学にたどり着かざるを得ないと始まる。意識は感覚を受け取ることの連続で成り立っているという意識の流れの理論を提唱した。『宗教経験の諸相』 [26]では、特殊な意識状態について追求する。ウィリアム・ジェームスは、アメリカで展開した『プラグマティズム[27]という東洋哲学(東洋思想)に近いジャンルの哲学者としても広く知られる。ここでは、ハーバード大学でサイケデリックスによる研究をはじめたことが強調される [28]。弟は小説家のヘンリー・ジェイムズである。

1892年、アメリカ心理学会が設立されウィリアム・ジェームズの心理学が全盛となった [29]

ドイツのライプチヒ大学のウィルヘルム・ヴント(Wilhelm Wundt、1832年 – 1920年)も少し後の1879年に心理学実験を開始し、その心理学が世界中に広められた人物と紹介されることも多い。ヴントは、心はどのような要素で成り立っているかというように構成要素とその結合法則を明らかにしようとした。その後、ドイツにゲシュタルト心理学が成立し、心はものごとを認識するときに分解された構成要素ではなく、要素が全体としてまとまった状態で認識をしているという理論を展開した。どちらもドイツ特有の全体主義的な哲学のドイツ観念論の影響がある。

精神分析

精神分析(pyshoanalysis)は、心理学というよりも精神分析学というひとつの学問として確立されている。無意識の発見が重要視される。

フロイト(ジークムント・フロイト、Sigmund Freud、1856年 – 1939年)は、精神疾患の治療体験から人間の自我を分析する精神分析という体系を確立した。自分が意識できていない記憶が精神疾患を発現させていると考え、その記憶を探す手法を探求した。この意識できていない記憶は自分の意図していないところで無意識によって隠されることによって記憶から自分を守っているということである。無意識によって記憶が抑圧されていると呼ばれる。これは防衛機制と呼ばれ、防衛機制は自分の直面したくない日常的な出来事に対してもはたらいている。抑圧された記憶に対面することで記憶が統合され、その精神疾患の症状が消滅する。

この抑圧の発見には、女性は家事と子育てをし稼ぎ主の夫を支えるという考えのもとに女性の地位が下がっていた時代背景と、その時代の医師が女性は性に関してタブーであるべきとしたため、性欲の抑圧がいらだたしさ生じさせるということがフロイトの精神分析学を誕生させたという指摘がある [30]

1896年にフロイトは精神分析という言葉を用いる。フロイトは、無意識を探求するために、はじめは催眠状態を用いたが危険性も高かったため、そのうちリラックスさせた患者に好きな単語をしゃべらせる自由連想法という手法によって無意識の分析をはじめた。

また、フロイトは転移を発見し、これは幼い頃の記憶による感情が無意識的に治療者に向けられることであり、精神分析に応用した。

私は、自分のボスに対して怒っている。しかし、この怒りは、「私は、いい人であり、いい人は怒ったりしない」というような自己-感覚に対しては脅威である。そこで、私はこの怒りを分離し、抑圧する。(中略)このとき、疎外された感情は、私のなかで他者として現れる。(中略)
突然、世界は、まわりじゅう怒っている人だらけになる。(中略)
しかし、この憂鬱を乗り越えるためには、まず自分がその怒りを再所有しなければならない。すなわち、怒りをもっていることを認めなければならない。(中略)
精神力学サイコダイナミクス的な「無意識」という観念は、実際は経験的な証拠と調査のデータによっている。(中略)
多くの人は、フロイトはただの一度もエゴとかイドという言葉を、使わなかったことを知らない。フロイトが書いたときの代名詞は、「この私」と「そのそれ」(定冠詞がついている)である。(中略)
すでに述べたように、ストレーチはラテン語のエゴとイドという言葉を用いて、フロイトを科学者らしく見せかけようとしたため、聡明な「切り離された自己」の現象学者としてのフロイトを完全にあいまいなものにしてしまったのである。(中略)
しかし、実際にフロイトが言った言葉は、「それがあったところに、私がいるべきである」であった。(中略)
なぜなら、この方法論は、今やますます、その正しさが証明され、それと同時にますます忘れられて、薬を飲むこと(右上象限)と、瞑想として影を追い払うこと(左上象限)にとって代わられているからである。(中略)
ポイントは、いかなる感情であっても、健全な超越とは、それを疎外して、外部、すなわち「あなた」「彼」「彼女」「それ」に投射するのではなく、自分のものとして所有した後、手放し、脱同一化することである。(中略)
主格から所有格への変換とは、たとえば「私は、強く怒っている」から「私は、私の怒りを観察している」への変換である。
(ケン・ウィルバー『インテグラル・スピリチュアリティ』松永太郎訳、春秋社、2008年。177、181-182、185-186ページより引用。ISBN 978-4393360477。(原著 INTEGRAL SPIRITUALITY, 2006))

右上象限=客観的物質の世界、左上象限=主観内面の世界である(AQAL)。主観・客観ともに、ただ視点が異なるだけであり、どちらが絶対的であるということはない。さらに、主観の世界にもさまざま視点があり、どれが絶対的であるかではなく、位置づけの解釈が重要である。

現代では、数年の期間を要するといわれる自由連想法による治療はあまり行われていないが、患者を理解するために自我の理論が用いられている。

ウィーン精神分析協会とフロイトからの展開

フロイトはウィーン精神分析協会を設立した。

自我心理学

自我心理学はフロイトの娘であるアンナ・フロイト(Anna Freud、1895年 – 1982年)に起源をもつ、自我の発達理論である。

以降、フロイトの曖昧な部分を厳密に追求したり、解釈のし直し、批判の繰り返しで様々に展開し、自我の機能と精神疾患との関連の理論が展開された。
精神分析学はフロイトの理論を学び解釈をしなおした哲学者としても知られるジャック・ラカン(1901年 – 1981年)などによって、社会分析にも応用されている。

フロイトの下で学び独自の理論を組み立てていった人物には、理論に世界中の神話を融合させ神秘主義に傾いたユング(カール・ユング、Carl Jung、1875年 – 1961年)、セルフエスティーム(自尊心、self esteem)を重要視したアドラー(アルフレッド・アドラー、Alfred Adler、1870年 – 1937年)、人間は安定感への欲求が根底にあるとしたカレン・ホーナイ(Karen Horney, 1885年 -1952年)、人間性の回復を追及したエーリッヒ・フロムが代表的である。4人とも精神分析協会から拒絶されている [31]。心理学者のティモシー・リアリーの理論の主柱となっているということで、人間関係を重視したハリー・スタック・サリヴァン(Harry Stack Sullivan、1892年 – 1949年)の名も覚えておきたい。H・S・サリヴァンはフロムと同じような理論を違う角度から説明し、フロムの理論と補いあっているともいわれる [32]

セルフエスティームは自分が自分をどう捉えているのかという自己認識の状態が、自分の感情に大きく影響を与えているとした。

カレン・ホーナイは、1942年出版の『自己分析』 [33]という著作で、自分で自分を精神分析する手法を残し、また理論の説明に偏りがちな精神分析の具体的な治療方法を公開している。

ユングの普遍的無意識

ユングは、比較宗教学や神話や芸術を分析した結果、共通の規則性があるためイメージの元型があるとし、無意識の他に人類が共有する普遍的無意識があり、その内容が浮上していると主張した [34]
『赤の書』
『赤の書』
C・G・ユング、ソヌ・シャムダサーニ編『赤の書 -The“Red Book”』河合俊雄監訳、田中康裕訳、猪俣剛訳、高月玲子訳、創元社、2010年。

ユングの秘儀、アクティブ・イマジネーション

アクティブ・イマジネーションは、目覚めたまま無意識を探求する技法である。目覚めたまま、元型に出会うという幻覚を見ているのに近い状態を起こす。こうして自分を越えた何かを統合することを重視した。ユングはこの技法をセミナーで指導しただけで著作としてユングがまとめたものは存在しない [35]

ユングの造語、シンクロニシティ

シンクロニシティ(synchronicity)という言葉はユングが作った [36]。意味は、予感が現実になることや、 離れた場所で同じ考えや夢が生じるなど、因果的に説明不可能な偶然の一致である [37]。日本語では、共時性、同時性などと訳される。この「偶然の協調」について、ユングを後継者として、また長男として迎えようとしていたフロイトが考え直すように何度も手紙を送ったが、結局これはユングとフロイトの決別の原因となった [38]

アドラーの共同体感覚

自分のことばかりを考えていれば人との対立が生まれることで心に葛藤が起こり精神的な症状が出るが、逆の行為、つまり自分自身を大切にした上で他者に関心をもちより大きな共同体を想定し協力し貢献することで共同体感覚が生まれるとした [39]

ライヒ、性の革命

そして、フロイトの理論を学び、性的欲求を抑圧することで権威主義的な独裁が出現するとして性の解放を唱えたウィルヘルム・ライヒ(Wilhelm Reich、1897年 – 1957年)も挙げたい [40]。また、ライヒはオルゴンエネルギーというエネルギーで病気を治療でき、オルゴンエネルギーをオルゴンボックスにためることができると主張した。また、宇宙人が地球侵略をたくらんでおり、オルゴンエネルギーで飛んでいるUFOから排出されるデッド・オルゴンが地球の大気を汚染しているので、UFOを撃墜すべきだと政府に勧告した [41]。ライヒの理論は徹底的に弾圧され各国を亡命し続け、アメリカでの死後、アメリカ政府によって研究文書が燃やされた。キリスト教神学では、人は神に似せて作られたので宇宙人が存在すると言われれば困ります。しかし、症状のみが防衛機制による自己防衛ではなく、性格全てが自分を守る「鎧」だとした理論は、ゲシュタルト心理学など多くの心理療法の基礎にもなっている [42]。ライヒは心の問題が筋肉に緊張をもたらしているから身体に働きかけて心を治療できると主張していた [43]

UFOについて、ユングは元型のイメージの表出であるとしている [44]

愛するということ
エーリッヒ・フロム『愛するということ』新訳、鈴木晶訳、紀伊國屋書店、1991年。

フロムの『愛するということ』

1956年に出版されたこの著書『愛するということ』 [45]は、人間の成長について深い示唆を示している。
まず、人間の不安の欲求の根源は孤立の克服であるという提起からはじまりその解決法を模索していく [46]。そして、さまざまな孤独の解消方法を比較し、普遍的な愛による解決にたどり着く。

集団への同調による一体感は、強烈でも激烈でもなく、おだやかで惰性的である。したがって、当然ながら、孤立からくる不安を癒すには不十分である。現代の西洋社会に見られるアルコール中毒、麻薬沈溺、強迫的なセックス、自殺などは、この集団への同調が必ずしもうまく行っていないことのあらわれといえる。しかも、この解決法はおもに精神にとって効果的で、肉体にはあまり効果的ではないので、この点でも祝祭的興奮状態にくらべると不十分である。
(中略)
生産的活動で得られる一体感は、人間どうしの一体感ではない。祝祭的な融合から得られる一体感は一時的である。集団への同調によって得られる一体感は、偽りの一体感にすぎない。完全な答えは、人間同士の一体化、他者との融合、すなわち愛にある。
(エーリッヒ・フロム『愛するということ-新訳版』鈴木晶訳、紀伊國屋書店、1991年。ISBN 978-4314005586。34、37ページより引用。(原著 THE ART OF LOVING, 1956))

ここで愛とは、受動的に恋に落ち嫉妬や欲望に捉われるといったものではなく、人間的な力によって自から働きかけていく慈愛である [47]
愛する方法の一つとして自由でいられることを強調する。ここで重要視されるのは、内的な自由を確保し様々な変化に気づくことでナルシズムを克服し客観性を保っていることである。

実際、集中できるということは、一人きりでいられるということであり、一人でいられるようになることは、愛することができるようになるための一つの必須条件である。(中略)いくつかのごく簡単な練習をしてみるといいだろう。(中略)
呼吸について考えるのでもなく、むりに呼吸を整えるのでもなく、ただ自然に呼吸する。そうすることによって、呼吸が感じられるようにする。そこからさらに、「私」が感じ取れるように努力する。(中略)
そのとき自分がやっていることだけが重要なのであり、それに全身で没頭しなければならない。(中略)
集中するとは、いまここで、全身で現在を生きることである。彼の精神は、リラックスしながらも用心おこたりなく、精神を集中している状況、すなわち車を安全に運転するという状況に、どんな変化が起きてもわかるように心を開いている。(中略)これと同じように、人は自分自身にたいして敏感になることができる。(中略)同じように、なんとなくいらいらしたり、腹が立ったり、また白昼夢にふけるとか、その他の逃避的な活動にふけったりしたときも、それに気づいたら、自問するのだ。以上の例に共通して重要なのは、変化に気づくことと、手辺にある理屈に飛びついてそれを安易に合理化しないことである。(中略)
そして、愛の技術を身につけたければ、あらゆる場面で客観的であるよう心がけなければならない。また、どういうときに自分が客観的でないかについて敏感でなければならない。他人とその行動について自分が抱いているイメージ、すなわちナルシズムによって歪められたイメージと、こちらの関心や要求や恐怖にかかわりなく存在している、その他人のありのままの姿とを、区別できるようにならなければならない。
(エーリッヒ・フロム『愛するということ-新訳版』鈴木晶訳、紀伊國屋書店、1991年。ISBN 978-4314005586。167、170-172、179ページより引用。(原著 THE ART OF LOVING, 1956))

しかし、この内容の実践について分かりにくい部分の詳細については瞑想あるいはクリシュナムルティを参照されたい。
そして、人間は条件さえそろえば平等・正義・愛という信念にもとづいた社会を打ち立てられるということを念頭においている [48]。このように個人だけでなく社会の転換も念頭に置いた示唆が1956年のフロイト派の精神分析から派生したフロムから提起されていることは、作家のオルダス・ハクスリー同様に、西洋において人間の潜在価値を発揮した社会の創造に向けての提言として重要な転機を与えているといえるだろう。そして、すでにハクスリーの風刺した奇妙な世界になってしまっていると指摘している。

現代人は、オルダス・ハックスリーが『すばらしき新世界』で描いているような人間像に近い。うまい物をたっぷり食べ、きれいな服を着て、性的にも満ち足りているが、自分というものがなく、他人ともきわめて表面的な触れあいしかなく、ハックスリーが簡潔にまとめているようなスローガンに導かれて生きている(中略)今日の人間の幸福は「楽しい」ということだ。楽しいとは、何でも「手に入れ」、消費することだ。商品、映像、料理、酒、タバコ、人間、講義、本、映画などを、人びとは片っぱしからみこみ、消費する。世界は、私たちの消費欲を満たすための一つの大きな物体だ。大きなリンゴ、大きな酒瓶、大きな乳房なのだ。私たちはその乳房にしゃぶりつき、限りない期待を抱き、希望を失わず、それでいて永遠に失望している。
(エーリッヒ・フロム『愛するということ-新訳版』鈴木晶訳、紀伊國屋書店、1991年。ISBN 978-4314005586。132-133ページより引用。(原著 THE ART OF LOVING, 1956))

社会に養成された貪欲な消費欲と、孤独と失望でいっぱいになった精神である。
キリスト教神学に対する態度もはっきりしており、想定した神の信仰ではなく自分と神が合一することを重視し、またキリスト教神学の残虐性および真理の探究の精神が科学を生んだという歴史的に重要な指摘をしている。

神への愛とは、思考によって神を知ることでも、神への愛について考えることでもなく、神との一体感を経験する行為である。(中略)
インドや中国の宗教や神秘主義においては、人の宗教的な務めは、正しく考えることではなく、正しい行いをすること、そして/あるいは、精神を集中させた瞑想の行為の中で神と一体になることである。西洋思想の本流ではこれが逆になる。最高の真理は正しい思考のうちにあると考えられていたために、正しい行為も重要だとされたが、おもに思考が強調された。そのため、宗教においては教義体系がつくりあげられ、教義の表現をめぐってはてしない議論が繰り返され、「無信仰者」や異端者にたいしては不寛容であった。(中略)思考の重視は、もう一つ、歴史的にみてきわめて重要な結果をもたらした。思考によって真理を発見することができるという発想は、教義だけでなく、科学を生んだ。
(エーリッヒ・フロム『愛するということ-新訳版』鈴木晶訳、紀伊國屋書店、1991年。ISBN 978-4314005586。119-121ページより引用。(原著 THE ART OF LOVING, 1956))

行動主義心理学

1912年に行動主義が台頭するまでウィリアム・ジェームズの心理学が全盛であった [49]。行動主義は教育分野にも大きく影響を与えた。

条件付け

ワトソン(John Broadus Watson、1878年 – 1958年)は、心の存在よりも何をすれば生物の行動が変化するのか客観的に観察した。褒賞と罰によってどのように行動が変化するかということである。これは条件付けと呼ばれる。こうして引き起こされる行動の変化を、行動の強化あるいは消去と呼ぶ。客観性があるため、有効性などの科学的評価が行いやすい。ただし、行動の変化は条件付けが何度も繰り返されることによって学習されて起こるため、劇的な効果を望むことはできない。「反応度効果(reactivity effect)」とは、なんらかの問題に取り組むためにデータを収集する段階で、データ収集のみが刺激となって問題行動が消失することを言う。

「あなたがよいと思う便はどういったタイプのものですか?」
 私はこういった質問を、控えめで冷静な態度をもって、40分以上にもわたってつづけたわけである。このとき私は、自分が強い関心に加えて、決めつけることのない、敬意を払った態度をとっているという印象を与えることに成功したと確信している。このような一連の質問を繰り返すなかで、次第にこのクライエントは、明らかに居心地悪そうな様子になっていった。(中略)
 この面接で驚くべきことが起こったのは、面接が終わってすっかり時間が経過した後のことであった。そう、彼は、その後、二度と便をもらすことがなかったのである。
(B.W.ウォルシュ『自傷行為治療ガイド』松本俊彦訳、金剛出版、2007年。ISBN 978-4772409568。142ページより引用。(原著 TREATING SELF-INJURY: A Practical Guide, 2006))

刷り込み

刷り込みインプリンティング、imprinting)は、ノーベル賞を受賞した動物学者のローレンツが発見した。たとえば、卵から孵化したアヒルがはじめに見たものを親として学習してしまうというように、生物が基本的な行動を覚える際に1度の学習で強く行動が条件付けされることをいう。条件付けというか、ティモシー・リアリーが言うには、条件付けによる関連付けの効果が時間が経って忘れるなどして弱まってくると、刷り込みによって学習されている関連付け行動に戻ってくる。

行動療法

行動主義は、スキナー(B.F.・スキナー、Burrhus Frederic Skinner、1904年 – 1990年)が大きく進展させた。スキナーは外部から客観的に観察できるものを扱うという科学本来の手法を徹底的におし進めた。行動療法という単語は、1953年にスキナーがはじめて用いたが、精神疾患に応用しだしたのはアイゼンク(Hans Jurgen Eysenck、1916年 – 1997年)で、1960年に『行動療法と神経症』 [50]を出版している [51]。行動の原因となっている抑圧された記憶は解決させず、表面に現れている行動だけを条件付けによる学習によって変容させることができる。人の行動の90%は習慣であり、つまり学習され条件付けられた行動である [52]

行動療法には、リラックスした後に不安の原因となっている状況に直接暴露することで不安感を軽減していく系統的脱感作法や、単純に暴露する暴露療法などがある。現代では、コンピュータ映像をヘッドマウントから描画した仮想現実(ヴァーチャルリアリティ)によって高所恐怖症などの各種恐怖症に暴露する方法が成果を挙げている [53]。強いショックを与える出来事に遭遇し発症する精神疾患はPTSD(心的外傷後ストレス障害)だが、アメリカ軍の兵士が仲間の死によって発祥したPTSDの治療にヴァーチャル・リアリティが用いられている [54]。通常、PTSDは避け続けている記憶にはっきり直面することで治癒していくのだが、この作業を仮想の映像によって補助していることになる。こちらは、抑圧された記憶に直接対面し葛藤を解決している。

スキナーの想定する幻想への批判

心理学者ティモシー・リアリーのハーバード大学でのライバルはB・F・スキナーであり、スキナーの指摘であるフロイト派から続いている心理学は非科学的であるということには同意するものの、スキナーがニュートン物理学的に心理を計測していることは誤っており、アインシュタインの物理学のような相対的なとらえ方ができていないため前時代的だと感じていた [55]

[K]その際、主体となるのは、何ですか?その人間自身ですか?その現実とは、その人間にとってどういういものでしょうか。
[T]全て量子物理学に基づいているんだ。即ち、他人との関係によって始めて位置づけられるわけだね。我々の原動力となっているのは、関係を持つことなんだ。
(「TIMOTHY LEARY」構成・江口研一、谷崎テトラ『ET PLUS-脱地球意識』17号、1990年9月、3‐6ページより引用。)

補足すると、心理状態の正常とか異常とかいうのは、ある時代のある国の社会、場面や状況によって何が適応しているかが決まるので相対的である。
リアリーによるスキナーの手法への核心をついた批判は以下である。

ハーバード大学の行動主義者、B・F・スキナーは、その著『自由と尊厳を越えて』の中で、政治的な条件づけのケースを提示している。それは次のように単純に要約できる。「人間は自由にふるまうことを許されると、責任のある行動をとれない。だから、義務に対して責任を負い、徳のある行動をし、信頼をもち、素早く行動し、効率的に動き、幸福感を抱き、法律を順守するよう心理学的に強制し、条件づけなければならない。人間は正しいことを行うには報酬と罰によってたえず操作されなければならないのだ」。
(中略)
人間の行動を条件づけるためには、幼児期に刺激を制御し、それを一生の間ずっと維持することが必要である。心理的なユートピアにおいては、条件づけは絶えまない心理テストを伴う。(中略)政治的な条件づけは報酬と罰の制御だけではなく、秘密も必要とする。異論を唱える自由志向の心理学者は秘密を暴露することによって心理学的ファシズムを完全に破壊することができる。(中略)このように、B・F・スキナーの提案は、政府が全面的にコミュニケーションを統制している国以外では、実行に移すことができない。
絶えまなく、強要し、思いださせる統制――たとえば警察国家のスローガンや消費国家の宣伝をいたるところで目にできるようにすること――がなければ、人々は簡単に訓練されたことを忘れ、自らの刷りこみと遺伝学的なロボット様式に漂い戻ってしまう。
(中略)
別の者たちは、各人が自分自身の刷りこみや条件づけを管理・制御することを教えられるような高いレベルへと変異することを選ぶだろう。
(ティモシー・リアリー『大気圏外進化論』菅靖彦訳、リブロポート、ISBN 978-4845710355。144-148ページより引用。(原著 INFO-PSYCHOLOGY, 1987))

心理学の転換

精神疾患を治療するだけでなく、人間の成長可能性を追求する第3の勢力が台頭する。1960年代に人間性心理学エサレン研究所が中心となったヒューマン・ポテンシャル運動がはじまると行動主義は勢力を弱めていった。行動主義に反発する人はウィリアム・ジェームスに回帰した [56]。ここでは実存主義という哲学が影響する。

カウンセリング

カウンセリングは、カール・ロジャース(Carl Ransom Rogers、1902年 – 1987年)が体系を発達させた。1942年に『カウンセリングと心理療法』 [57]を出版している。クライアント(相談者・来談者)にアドバイスをするのではなく、話をじっくり聞く傾聴、純粋さをもって無条件に肯定し共感していくことを通して、クライアント自身が解決方法を探すことを援助する。来談者中心療法(クライアント中心療法)とも呼ばれる。このような態度はカウンセリングの基本的な態度として今日でも重要視され、指示の必要な療法においてもまずこのような態度でクライアントに接することで、クライアントとの信頼関係を構築し打ち解けあうことが重視される。専門用語ではラポールを構築すると呼ばれる。

ロジャースのスキナーに対する批判は、科学的だとされるスキナーの分析手法は行動の原因がすべて外部にあり、内的に何を思ったかということは科学的に意味がないとして黙殺し、それにもかかわらず観察対象の鳩に対して期待している、感じているなど内的な表現を使っているという点である [58]。このような内面を無視した行動主義は少なくなっていく。

ロジャースは、手法を集団にも応用しエンカウンターグループ(encounter group)と呼ばれる集団療法に発展させた。グループでは、ファシリテーターと呼ばれるまとめ役を通じて、集団で意見を出し合いクライアント同士が受容しあい答えを発見していく。また、ロジャースはエンカウンターグループを教育の分野にも応用し、生徒と一緒になって問題の答えや生徒同士の規律を探った。また産業にも応用し実験工場では統制した工場より生産性を3倍以上向上させている [59]

ロジャースは、以下に引用するように、相手と人間的に関わりあうことで、相手は人間的な成長を成し遂げ自律的に行動するようになるということを応用し追求した。

クラスにおいて人間的であることが大切であることを、私は普通の方法とは違った仕方で学んだ。個人的な困難におちいっている学生などに対処する心理学的カウンセラーの経験から、彼らに話しかけ、助言を与え、事実を説明し、彼らの行動が何を意味しているかを語ることは役に立たないことがわかった。しかし、もし、私が彼らを本質的には有能な人間であると信頼し、彼らに対して真実の私自身としてかかわり、彼らの内面から、彼ら自身が感じて、知覚するように、理解しようと努めるならば、建設的なプロセスが始まることを私は少しずつ学習した。彼らは、より鮮明で深い自己洞察を進め、自分の苦痛を取り除くために何ができるかを洞察し、より自律的になって、いくつかの問題を解決するための行動をとりはじめたのである。
(カール・ロジャース+H.ジェローム・フライバーグ『学習する自由-第3版』コスモスライブラリー、2006年。ISBN 978-4434085703。60-61ページより引用。 (原著 Freedom to Learn, Third Edition, 1994))

つまり、人間を中心として接する、人として接するということの力である。これについて、ロジャースはパーソン・センタードと繰り返し述べている。

単純な謙遜・尊重・非支持・放棄、こういった教義的に方法論を定めての実行とは違い、クライアント(来談者)/パーソン(個人)の自我の感じ方を感じ取り(共感)、自分の自我経験を押し付けずに聞き(傾聴)、自分の考えを差し挟まないこと(純粋さ)で共感と傾聴を補足することで、他者の自我の感じ方に広がりをもたせるような状況を作って成長を促すのではないかという印象を受ける。
この心持ちをそれとなく、クライアントに教えるのであるから、自らがそのスタンスを会得していなくてはならない。従って、読書好きならば、カウンセリングを受けるよりもそのスタンスを直接享受されるカール・ロジャースの著作を読むのもいいと思う。
人を伸ばす力―内発と自律のすすめ
エドワード・L. デシ、リチャード・フラスト『人を伸ばす力-内発と自律のすすめ』桜井茂男訳、新曜社、1999年。

自律性と学習性無力感

行動主義の大きな特徴である統計を根拠とできる科学性は、自己がコントロールしている感覚が重要であるというところまで解明している。行動の動機付けモチベーション、motivation)には、ほめ言葉や褒賞などが与えられるために行動を起こす「外部」からの動機づけと、好奇心や達成感や楽しみなど心の「内部」からのものに分かれる。この内部からの動機、内発的動機が自律的なものである。動機付けの研究者エドワード・L・デシによる行動主義的な統計による研究によって、外部から報酬を与えだすと、人は自分の意思によって行動する自律性を減少させ無気力に陥っていくことが分かっており、外部からの報酬は内発的動機に結びつくようにかなり慎重に用いられなければならない [60]。IQをのばしやすい方法は、「賢い」などのように素質として褒めるのではなくて、コントロールが効果的にはたらいたこと、つまり取り組んだことを褒めるということであり、褒美を与えるという契約はもちろんよくない [61]セリグマンらによれば、自己によるコントロールが無効な状況が続くと学習性無力感という状態に陥り積極的な行動が減少するが、これは、うつ病に非常に酷似しており、うつ病同様に薬物療法や認知療法などの心理療法によって回復する [62]

認知療法

アルバート・エリス(Albert Ellis、1913年 – 2007年)は、患者が思い込んでいる現実に適応しない信念(思い込み)が感情に影響を与えているとして、信念を合理的(rational)なものに変えることで感情を変化させようとした。これは1955年に発表され、論理療法(Rational Therapy)と呼ばれる。つまり、ここで科学的思考は、内的に考えていることの理解と、思考を変化させ治療を行うための主役として登場したのである。エリスは理論を発達させていき、現在では理性感情行動療法(REBT:Rational Emotive Behavior Therapy)と呼ぶのが一般的である。

その後、アーロン・ベック(Aaron Beck)は、うつ病の治療法として、気づかないうちに結論を出している自動思考と、否定的な考えを起こしている考え方の型枠であるスキーマを特定し、これらを変化させることで感情を変化させる認知療法を開発した。人が考えていることの95%は前日にも考えており、そのうち80%は悲観的な考えである [63]

二人とも精神分析による治療が効果的でないことを理由に手法を開発している [64]

これは行動主義と組み合わさり、認知行動療法に発展し、今日でも多くの精神疾患に有効である。行動療法と同じく、基本的には抑圧された記憶には触れず、繰り返し条件付けを行う。手法がマニュアル化できるため、イギリスでは政府がうつ病などに対する認知行動療法として、電話による自動応答システムを全国民が無料で利用できるようにしている [65]。現代では治療的対話を行うためのコンピューターソフトも登場している。

また、認知行動療法を行う読書療法として『いやな気分よ、さようなら』 [66]を自助的に読むことで、3ヶ月後には認知行動療法と同等の効果がみられるという報告がある [67]

ポジティブ・シンキング

認知の再構成の歴史には、ポジティブ・シンキング(楽観思考)、それがキリスト教と組み合わさっていったニューソート(New Thought)があり、これは1860年の著書に起源する [68]。科学的な研究はあまり行われていないが自己啓発の方法としては現在でも主流である。楽観思考自体は、学習性無力感の研究者によると、楽観主義者は自分の課題を放棄しないが、悲観思考者は自殺しやすくあきらめやすく問題を解決できないことが多いので、新たな行動を起こさせるのに自己効力感(self-efficacy)を奮起させる必要があるとしている [69]。また、悲観主義者は同じような悲観主義者と関係をつなげていき、また悲観思考自体が伝播しやすい [70]
心理学用語では「ネガティブ・バイアス」と呼ぶが、人は楽観的な考えより悲観的な考えや経験のほうに強く反応しやすく記憶に残りやすい [71]
この意味では、楽観主義の採用は新たな挑戦や行動を決起させる媒介となるのではないだろうか。

交流分析

交流分析TA:Transactional Analysis)は、ユングやアドラーと同じように精神分析協会から1956年に拒否されたエリック・バーン(Eric Berne、1910年 – 1970年)が、1957年に発表した理論で、この時点で理論の90%が完成していたといわれる [72]。人間の関係性をみる理論である。

人間同士がコミュニケーションを取るときに3種類の役割を演じていると分析した。P(Parent、親などから学んだ自我の状態)、A(Adult、大人として主体的に考える)、C(Child、子供)の役割である。Aの役割を演じているときには理性的な大人としてコミュニケーションをとるが、自分が子供のころのコミュニケーション方式であるCや、反対に自分の親の行動様式を取り入れ模倣したPの役割を演じているときに問題が生じていることがある。つまり、フロイトの転移の理論の発展である。また、個々の人々は成長してきた環境を経て脚本と呼ばれる自分の人生に関するルールを持っているが、これを改めることで自己を積極的に実現する。コミュニケーションにおけるルールをさまざまな人との関係において再現しようとすることはゲームと呼ばれる。

TAが発表された同じ年、ティモシー・リアリーは『人格の人間関係による分析(邦訳なし)』(Interpersonal Diagnosis of Personality, 1957) [73]を出版し、人格はゲームと呼ばれる人間同士の駆け引きであるグループ・プロセスによって作られたルールであると主張し、精神療法分野での同年における最高の研究として『心理学年鑑』で評価されている [74]

人間性心理学

人間性心理学とは、人間の心が持つ潜在能力を重視した心理学で、ティモシー・リアリーに言わせれば、軍事学的な行動主義の勢力は人間性心理学の勢力が増したことで衰退した。人間を精神疾患から回復させるだけでなく、人間は心理的にどこまで発達できるのかということを追求している。前述のカール・ロジャースやエリック・バーン、ほかにマズロー(エイブラハム・マズロー、Abraham Maslow、1908年 – 1970年)による自己実現の理論が有名である。

1940年代のマズローは行動主義の優れた心理学者であったが、独自の理論を提唱しだすと学会から追放され、1954年には主流である行動主義に反する研究をしている心理学者のリストをつくり論文を相互に送付しはじめる [75]
1961年にはマズローらが『ヒューマニスティック心理学雑誌』(Journal of Humanistic Psychology)を発行し、編集委員にはマズローやロジャース、作家のオルダス・ハクスリーなどがいた [76]。1963年、ロジャースはマズローにも助力してもらいヒューマニスティック心理学会を創設する [77]

1962年に、マイケル・マーフィーによって設立されたエサレン研究所 [78]と共に、ヒューマン・ポテンシャル運動の中心的勢力となっていきました。マーフィーは瞑想の実践者であり、やはりオルダス・ハクスリーの『知覚の扉』 [79]の思想に惹かれていた [80]

マズローは、人間の欲求を5段階にわけ説明した。フロイトが人間を説明しようとした性欲は1段階目、ホルナイによる安定感への欲求は2段階目である。3段階目は集団に帰属したいなどの帰属の欲求、4段階目は他者に承認されたいという欲求や自尊心の欲求がある。こうして、低段階にある欲求を満たした後、5段階目に自分の成長の可能性を追求する自己実現の欲求に移っていくとした。ただし、これは統計による傾向であってかならずしも、順番通りにすすむわけではない [81]

ヒューマン・ポテンシャル運動という言葉は、1965年ごろエサレン研究所で生まれた [82]。エサレン研究所は東洋やヨーロッパの雰囲気があり中心的になった3つの療法は、ゲシュタルト療法、オープン・エンカウンター(ロジャースのものはベーシック・エンカウンター)、ボディ・ワークである。ゲシュタルト療法をはじめたフリッツ・パールズは、エサレン研究所に家を持ち住んでいた。ゲシュタルト療法では「いま、ここ」でのことについて行動に移すことで気づきを促す。ボディ・ワークは精神分析と違い、言語的制約のない感情表現の手段である [83]

脳科学

精神薬理学

1950年代末には、精神薬理学が急速に発達し、新しいタイプの薬が用いられるようになり、実験も増加していった [84]。LSDなどの研究を行っていたこともあるオスカー・ジェニガーが、月経前のうつ病をホルモンの問題とみなし、女性ホルモンのプロゲステロンを用いた二重盲検法による試験で月経前の症状を和らげたことを医学協会で説明したとき、それでもフロイト派から無意識の要因が絡んでないかと指摘され、二度目にはゴリラも同じ女性特有の問題を持っていることを発表し、心が身体によって影響され心の問題が生化学と関連するという理解の下地を作った [85]。身体の化学が心に影響を与えるという考え方は、まだ抵抗があったということである。純粋に心だけの問題と思われていたものが生化学の問題となった。こうした薬は脳内の神経伝達物質の働きに作用する。

うつ病に対する医薬品、心理療法、プラシーボ、未治療における平均的改善度
『抗うつ薬は本当に効くのか』 [86]より。
うつ病に対する医薬品、心理療法、プラシーボ、未治療における平均的改善度。

うつ病では、38の研究から3000人以上の気分改善度を解析したところ、心理療法と薬物療法の効果はだいたい同等であり、なによりプラシーボ(ニセ治療)でも一定の効果があることが面白い [87]

そして、サイケデリックスによる臨床研究

サイケデリックスのLSDは幻覚作用があることから、幻覚を症状として持つ統合失調症との関連によって大きく注目され、LSDを用いたさまざまな精神疾患の治療研究も始まる。
1953年、イギリスでサイコリティック療法が生まれ精神分析の補助として少量のLSDを投与し、抑圧された記憶の想起を容易にし治療の速度を上げ、カナダのハンフリー・オズモンドが普及させたLSDを大量投与するサイケデリック治療法は、アルコール依存症者の半数に顕著な治癒を見せた [88]。1960年ごろには、ティモシー・リアリーがハーバード大学で、神秘体験の研究や、サイケデリックスの作用で刷り込みを起こし精神疾患や人間性を短期間で治療する研究を行うが、3年ほどで研究が停止された。リアリーらは、1964年には『チベットの死者の書-サイケデリック・バージョン』という自我を超越するためにLSDなどのサイケデリックスを用いるガイドブックを出版している [89]。1966年ごろにはLSDも法律によって違法な薬物となり研究ができなくなった。違法化の背景には、LSDを投与して反応だけを見て精神に障害が起こったかのような報告しかできなかった行動主義勢力の影響や [90]、その頃極秘にLSDの研究を行っていたためこうした研究を公にしたくなかったCIA(アメリカ中央諜報局)による圧力が大きい。
ハーバード大学でのサイケデリックスの研究停止から40年たち、2005年ごろには再びサイケデリックスによる精神疾患の治療の研究が再開される [91]

一旦、第一回路が恐怖の刺激を刷りこむと、この科学―電気的シナプスのパターンを変える唯一の方法は、配線を停止するか、しなおすことによってである。(中略)
神経パターンの再配置の唯一の方法は、シナプスでの神経伝達物質の働きに干渉し、古い刷りこみを消去し、新しい刷りこみを可能にすることである。ショック、病気、トラウマ、ドラッグ、出産、刺激の剥奪、電気の充電などがシナプスの化学を変える唯一の方法である。身体内部の活動がシナプスの化学を変えるほど圧倒的に強烈になると、外的な環境への刷りこまれた生命線が撤回されるのだ。そうして、再刷りこみの機会が提供されるのである。
(中略)
第六回路の神経伝達物質ドラッグの現在のレパートリーによって、およそ一週間に一度再刷りこみすることが可能なようだ。毎日、再刷りこみすることはできない。新しい心の鋳型が固まるまでに五日から七日かかる。
(ティモシー・リアリー『大気圏外進化論』菅靖彦訳、リブロポート、ISBN 978-4845710355。128-129、151ページより引用。(原著 INFO-PSYCHOLOGY, 1987))

「MDMAをはじめとする各種の幻覚剤がごく幼い頃の記憶を取り戻すのに役立つことは、いくつもの逸話が示すところだ」と、ハーバード大学のグリンスプーン博士は言う。
(中略)
「これらの薬を使えば、患者はたとえ一時的にせよ、通常なら守りが堅くて近寄ることさえ難しい心の領域に入り込んで、問題を乗り越えることができるという事実が報告されているのだ。幻覚剤は、普通は立ち入れない心の奥底に意識を保ったまま訪れることを可能にするものだ」とグリンスプーン博士。
心理療法での幻覚剤使用は是か非か(下) (WIRED VISION、2000年11月14日))

この部分の明確な証拠として、LSDなどで、日光過敏症やアレルギーのアレルゲンに反応しないように再セットできるという症例報告が面白い [92]

モノアミン仮説

1965年にはマサチューセッツ精神衛生センターのジョゼフ・シルドクラウトによって、うつ病に関して測定できるものとして、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンといった脳内神経伝達物質が不足しているのではないかというモノアミン仮説が提起される [93]。こうして精神医学が脳科学へと変貌している側面がある。

認知心理学からの発展

1967年に、脳の情報処理の理論を展開したナイサー(Neisser)が『認知心理学[94]という著書を出すと、科学を追及する行動主義はこちらに乗り換えていった [95]。『認知心理学』でもオルダス・ハクスリーが言及されます。
脳をコンピュータを比ゆとして理解するという発想は、1950年代にLSDや感覚遮断タンクによって内的な幻覚体験を研究していたジョン・C・リリーが『バイオコンピュータとLSD』(原題 Programming and Metaprogramming in the human Biocomputer[96]という政府への報告書によって始めて提示されている [97]

1960年代まで、記憶について語ることは科学的でないとされたが、ウィリアム・ジェームズの『心理学原理』における記憶についての洞察である一次記憶・二次記憶という概念が脳科学の分野で再登場した [98]。これは、現在では名称が変わっており、すぐに忘れる短期記憶と、繰り返すことなどによって記憶が定着する長期記憶のことである。
脳の約6割が脂肪であり、脂肪酸の摂取状況と学習や精神疾患との関連が報告されている。
物質の状態を測定する機器や技術の発達とともに、脳の精密な構造を理解したり脳の状態をリアルタイムで測定できるようにもなっていき、脳科学は科学として主要な位置を占めるようになった。日本の理研・脳科学総合研究センターは2020年までに精神病を根絶することを視野に入れている [99]

発達心理学

ジャン・ピアジェ(Jean Piaget、1896年 – 1980年)は、人間が誕生してからの発達理論を提唱した。12歳以降では論理的な思考様式が完成され、これは形式的操作期と呼ばれる。これは人間が4段階に成長してきた最後の段階であり、ピアジェの理論による発達の順序は、感覚・運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期である。ピアジェの理論に従えば高齢者は具体的操作期に退行すると考えられた。しかし、その後の心理学者によって、より成熟した思考様式である後形式操作期に発達すると考えられていった。

形式的思考と後形式的思考の世界観の比較(Labouvie-Vief, 1986) [100]
形式的操作 後形式的操作
現実を構成する行動要素を支配する普遍的で絶対的な法則や原理は、論理的な分析によって明らかにされる。 論理は現実というよりも思考の産物であるから、論理的な分析には限界がある。
知識は論理的に推論されるものだから、絶対的で文脈に依存しないと見なされる。 知識は思考の産物だから、絶対的ではなく文脈によって変わり得る。
現実は、閉じた静的な変化しないシステムとして記述される。 現実は、多重的で変化の統合されたシステムの総体として記述される。
現実は、互いに独立した変数から成るシステムである。 現実は、互いに関連した変数から成るシステムである。
部分は、全体とは独立に存在する。 部分は、全体との関連性において存在する。
矛盾の解決を目指す。 矛盾を現実の本質として認める。
仮想性、抽象性を強調する。 現実の生活を特徴づける実際の出来事を強調する。

このように後形式的操作期では、より成熟し現実に即した思考様式をとり、これは東洋思想における思考様式に近づいているとも言える。

言語学

ピアジェは、言語学の分野でノーム・チョムスキー(Avram Noam Chomsky、1928年 – )と論争をした。1959年 [101]、チョムスキーの主張は、人間は言語能力をはじめからもっているために世界中の言語は同じような構造をもつということであり、この影響によって言語習得にかかわる遺伝子の探索などが行われた [102]。この論争は脳科学に引き継がれ、ハーバード大学の脳科学の研究者のジョン・レイティによれば、言語能力を生誕的に持ちあわせているというチョムスキーの説を支持する科学的証拠は多く集まっている [103]
チョムスキーについては、同じ一般意味論の学者であるS.I.ハヤカワによる『思考と行動における言語』 [104]のように、政治的な大衆操作に対する分析と批判も代表的な活動である。たとえば、チョムスキーには『メディア・コントロール-正義なき民主主義と国際社会』 [105]のような著作がある。

マズロー、ピアジェ、言語学は構造主義という哲学が影響している。

神経言語プログラミング

神経言語プログラミングNLP:Neuro-Linguistic Programming)とは、言語と脳や身体との関係を追及したもので [106]、効果的な言葉の用い方や身振りの使い方によって人を目標達成に近づける手法であるため、コーチの技術として広まっている。
クリスティーナ・ホール博士の「言葉を変えると、人生が変わる-NLPの言葉の使い方」
クリスティーナ・ホール『クリスティーナ・ホール博士の「言葉を変えると、人生が変わる-NLPの言葉の使い方」』大空夢湧子訳、ヴォイス、2008年。
言葉の持つ影響力についての示唆に富んでいます。おすすめです。

はじまりは学生だったリチャード・バンドラー(Richard Bandler)がゲシュタルト療法に注目しNLPの原型としていったことである [107]。1975年にはジョン・グリンダー(John Grinder)と共に、催眠のミルトン・エリクソンの言葉の用い方について、意味論上のパターンを発見しまとめた著作を出しているが [108]、このリチャードとジョンの二人がNLPの創始者である。ゲシュタルト療法と催眠のほかに家族療法のバージニア・サティアを加えたこの3人の影響が主要な理論を構築している。ここでもひょっこり顔出すのが、作家オルダス・ハクスリーの『知覚の扉』 [109]である [110]
神経言語という言葉は一般意味論をはじめに提唱したアルフレッド・コージブスキーが作った言葉で、NLPは同じ一般意味論のチョムスキーの影響も受けている [111]。NLPでは、脳はコンピューターと似た機能を持っていることを前提とするように [112]、認知心理学の影響も受けている。
NLPにおいて、アンカー(碇)とは条件付けのようなものであり、トリガー(引き金)は条件付けられた行動を引き出すきっかけである。自分の引き出したい心理状態などにアンカーとトリガーを設定したりできる。アンカー潰しでアンカーを消すこともできる。
他に例を示すと、認識している前提・思い込み(フレーム)を認知させることで変化させる(リフレーミング)効果的な質問、認識を過去に戻らせてから(バックトラック)、リフレーミングする、あるいはポジティブな体験にアンカーする。未来を想像して今後を考え(フューチャーページング)、達成した想像にアンカーする。というような技法がある。

言葉に含まれた前提が認識を変えてしまうという仕組みが面白い。

変化のプロセスにおけるキーポイントのひとつは、本人が「変わることが可能なのだ」と思える状態にすることです。先ほどの男性が、自分はオーガナイズできない、自分は雑然としていると答えたとき、そこに含まれているメッセージは、私は物事を整然(オーガナイズ)とできない、というものです。(中略)しかし、「あなたはその知覚を持つことを、どのようにオーガナイズしたのですか?」と聞いたとき、この質問の構造として、もう既にあなたはオーガナイズすることができるし、今までもそれをやってきましたという前提が存在しています。
(クリスティーナ・ホール『クリスティーナ・ホール博士の「言葉を変えると、人生が変わる-NLPの言葉の使い方」』大空夢湧子訳、ヴォイス、2008年。137ページより引用。ISBN 978-4899761136。)

ここで面白いのは、一般意味論では言葉の裏にある根拠を探そうとする姿勢を持つが、ミルトン・エリクソンモデルの催眠暗示は根拠のない言動によって人々の行動が変わる部分である。

西洋と東洋の統合・超越へのいざない

西洋における東洋哲学(東洋思想)の普及による発展が加速する。統計学の発展にともなった治療法の選択に統計研究を重視する「根拠に基づいた医療(EBM)」が普及する。ともなって治療効果を数値として統計的に算出した「根拠に基づくカウンセリング」(EBC:evidence-based Counseling)が注目を集めてくる。
ウィリアム・ジェームスが提起した「意識」についての研究は、行動主義者によって科学的でないとされ行われなくなっていたが、脳研究の進展によって研究が再開される。

身体機能にはたらきかける心理治療

光療法

光療法は、明るい光を照射することによって、本来は太陽にあわせて同期している生体バイオリズム(サーカディアン・リズム)を整える治療法である。1972年に脳の視床下部(ししょうかぶ)という部位の視交叉上核(しこうさじょうかく)が睡眠と関係することがわかった。遠い海外へ移動したときの生体リズムは元の国のように働くため、昼間に眠くなったりする時差ボケが起こるが、生体のバイオリズムは太陽の影響を受けて調整されているため次第にその国の時間に調和していく。光が無ければバイオリズムは25時間周期となるが網膜に光を通すことでリセットされる。夜が続く白夜のあるイギリスのような国に多い日照時間が短くなることによって起こる冬季うつ病(季節性情動障害)や、睡眠リズムのずれた睡眠障害などに効果がある。

EMDR

EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing :眼球運動による脱感作と再処理)は1989年にフランシーヌ・シャピロ(Francine Shapiro)が開発した手法による研究報告にはじまる [113]。睡眠中に記憶を再構成しているREM睡眠(Rapid Eye Movement sleep)と呼ばれる状態と同じように眼球を動かすことによって、自由連想法のように記憶を辿り葛藤を解消することを瞬間的に行うことができる [114]。深刻なトラウマを抱えたPTSD(心的外傷後ストレス障害)に効果を発揮する。

タッピング

タッピング(叩くこと)は、もとを辿れば気の理論を中核に持つ中医学(中国の医学)だが、セルフケアできるほど簡単なものである。
TFT(思考場療法、Thought Field Therapy)は、ロジャー・キャラハンが心理状態は微細なエネルギーの混乱の影響を受けるという理論から開発した [115] [116]。1980年にロジャー・キャラハンは、催眠、論理療法、認知療法、行動療法、クライアント中心療法などを用いてきた心理療法家であったが、それでも症状が改善されない患者のために手法を開発した [117]。目に見えない気の通り道といわれる経絡にある気の出入り口であるツボを順番に叩くことで不安感を軽減させる手法である [118]。患者はまず、自分に感情的な苦痛を与えることを意図的に考えるが、これを思考場チューニングすると表現する [119]。その後、疾患に適応した決まったアルゴリズム(手順)に沿ってツボを叩くことで、同じことを再び考えても苦痛が減少した状態になる [120]。たいていの心理的症状は5分以内に改善でき、効果は永続的である [121]。基本的な方法での治癒率は80%、それでも改善されない残りの20%ではさらに複雑なアルゴリズムを用い、全体的な治癒の成功率は97%である [122]。自律神経の状態を変化させるので、心臓疾患などの病気にも効果があるという研究データもある [123]
EFT(感情解放テクニック、Emotional Freedom Techniques)とは、大部分の理論をTFTを元にしてゲアリー・クレイグが発展させたTFTの簡略的なもので、より多くの問題に対応できる [124]

運動

ジョン・J・レイティが、『脳を鍛えるには運動しかない!』 [125]という著作を出し以下のような研究報告を紹介し、脳に影響をもたらす運動をすすめている。

  • 不安に対して有酸素運動はBDNFを増加させ不安を駆逐し、GABA、セロトニンを増やすことで問題を根本的に解決する [126]
  • パニック発作に対して、有酸素運動はANP濃度を増やすことで、不安やパニックを緩和する [127]
  • うつ病に対して、有酸素運動のほうが処方薬よりうつ病を改善し、再発率が低い [128]
  • ADHD(注意欠陥・多動性障害)に対して、有酸素運動によってすぐに増えるドーパミンとノルアドレナリンが症状を緩和する [129]
  • 依存症に対して、有酸素運動によってドーパミンが生成され、受容体に結合し渇望を抑え、定期的に運動することでD2受容体が生成され、報酬システムが改善され、タバコなどの薬物依存症、買い物依存症などを緩和する [130]

トランスパーソナル心理学

第二次世界大戦後、東洋思想の西洋での普及につれて、心理学は自我を超越(transpersonal)した心理状態にまで視野を入れるようになった。このように意識を成長させる潮流は、ニューエイジとも呼ばれる。19世紀に起こったニューエイジは霊媒を通してのものであったが、1960年代以降のニューエイジは意識の変容が焦点であり禅や瞑想など個人の体験に主体が移っている [131]

自己と外界の境界が消えるとき、自らである自然に親しみを持つことになり、自らである自然からの搾取が終わるのである [132]。そして、人間が利用するものとして神が与えた自然というキリスト教神学の教義 [133]も崩れ去ってしまうということになる。
1969年には、神秘体験や自己超越を研究していたスタニスラフ・グロフがマズローと意気投合しトランスパーソナル心理学会を設立します [134]。グロフはフロイト派の精神分析を学んだが、1950年代には精神安定剤などが登場しフロイトに疑問を挟んでいた [135]。1956年、グロフはLSDを摂取し、意識が体を飛び出し自分に境界がなくなり宇宙となる体験をし、研究を続けフロイトの理論では抑圧された幼いころの記憶がよみがえることについては説明できるが、個人的なものを超えた体験を説明できないとしてユングやライヒを調べ始めた [136]。そしてユングの作ったトランスパーソナルという用語を用いた心理学をつくった [137]。グロフは、1970年代にはエサレン研究所にて、呼吸法や音楽を組み合わせ薬物を使わずに超越体験を起こすホロトロピック・セラピーを開発した [138]

クリシュナムルティに導かれ精神修行をはじめたケン・ウィルバー(Ken Wilber)は [139]、これまで出てきたようなものも含めた東西の膨大な文献を元に精神や自我の発達理論を類型化し、1980年に『アートマン・プロジェクト』 [140]として自己超越までを含めた統合的な発達理論を発表している。ウィルバーは、ユングの理論における元型との接触はなおも自我の側の経験であるために神秘主義や超越には関連せず、厳密に神秘主義やトランスパーソナルを定義すれば無形態なものを見出すことであると説明している [141]

1980年代中盤まで「意識」に関する研究は科学的でないと行動主義に非難されたが、意識と脳の関係などについて、特に瞑想状態の意識の研究が増えてくる [142]
トランスパーソナル心理学へ発展する下地には、マズローをはじめとした自己超越への探求心があった。

マズローと自己超越

以下に引用するように、マズローは晩年、自己実現の後に自己を超えていくとし、つまり、違いはあるがユングの神秘主義の世界観のようなものを融合しているともいえるだろう。

わたくしはまた、人間主義的で第三勢力の心理学は、過渡的なもので、なお一層「高次」の第四勢力の心理学、すなわちトランスパーソナルで、人間を超えた心理学の準備段階と考えられると思う。それは、人間の欲求や利害よりもむしろ宇宙に中心をおき、人間性、アイデンティティ、自己実現などを越えてゆこうとするのである。
(アブラハム・H. マスロー『完全なる人間-魂のめざすもの-第2版』上田吉一訳、誠信書房、1998年。ISBN 978-4414304107。iiページより引用。(原著 Toward a Psychology of Being))

マズローは、これに関してもっとつっこんで言及している。以降に出てくるBはビーイング(Being)を意味します [143]。このBeとはフロムが、これからはHaveではなくBeだ、つまり所有ではなく心をもって関わりあっていくことであると言ったことに由来するでしょう [144]。マズローによれば、欠乏を解消しようとすることからくる動機付け(Deficienty motivations)ではなく、存在動機(Being motivations)という自己実現している人による人間として自然な動機である [145]

それは概括的には、何世紀にもわたって、宗教家・歴史家・思想家によって霊性や宗教心の不足という観点から論じられてはきたものの、医師・科学者・心理学者が精神医学的・心理学的・生物学的な「病気」または発育の不全や低下として論じたことはなかった。わたしはこうした「病気」(というより、人間性の低下)を「メタ病理」と呼び、B価値一般の欠如、あるいは特定のB価値の欠如から生じる現象であると定義したい。
(中略)
それはいますぐにでも心理学者や社会科学者たちが研究可能な分野であり、その分野で適当な方法さえ開発すれば、理論的にはいずれ神経科学・内分泌学・遺伝学・生化学の問題にもなっていくだろう。
(中略)
そこで「教育可能」あるいは再生可能な条件は経験の豊かさであるが、おそらく役に立つと思われるのは、向精神性サイケデリック薬物の適正な使用、エサレン研究所で行っているような瞑想や黙想などの非言語的方法、至高体験のさらなる研究、B認識などである。
明晰性(光明・覚醒・洞察・B認識・神秘的知覚などの明晰性)の最高レベルでは、B価値は等しくB事実とも呼びうる。人格の発達・教養の高まり・明晰性・感情の解放(恐れや禁止や防衛からの)・不干渉の最高レベルがすべて一つに溶け合うと、人間本位ではない本来のリアリティが、観測者の侵害による歪みがもっとも少ないリアリティそれ自体として、はっきりと見えてくる。すると、リアリティは真・善・完全・統合・生命観・法則性・美などとして描かれるようになる。
(中略)
そのとき、科学は芸術と見分けがつくだろうか?
(中略)
別の角度から見れば、これは哲学や宗教が人生の意味に関して問い続けていた大問題に対する解答を含んでいるともいえる。
(中略)
いうまでもなく、それはこの世界もしくはの神と合一するという、古典的な神秘主義者の言辞に酷似している。それはまた、個人の自己性が完全に融合して消えるという、さまざまな東洋的伝統を思い出させるものでもある。
(中略)
文字どおり独りになること、偉大な音楽や素晴らしい友人、自然の美に対して心を開くことなど、注意を内在的なものに向けるには、少なくとも最初のうちは、特別に意識的になり、その場その場で努力が必要だろう。慣れてくれば、そう願望しなくても、そう試行しなくても、いつの間にか自然にB領域での生活、つまり、「統合的生活」「メタ生活」「存在の生活」を送るようになっているだろう。

(引用元の論文:アブラハム・マズロー(上野圭一訳)「メタ動機:価値ある生き方の生物学的基盤」 ロジャー・N. ウォルシュ+フランシス ヴォーン編『トランスパーソナル宣言-自我を超えて』吉福伸逸訳編、春秋社、1986、ISBN 978-4393360033。225-244ページ。(原著 BEYOND EGO, 1980))

これは、作家のオルダス・ハクスリーが提案していたことに対する著名な心理学者による追求であるともいえるだろう。人間性の低下を心の科学の観点から病理として捉え、内面を重視した生活によって科学的にも超克することを提起し、それは芸術や哲学、そして宗教的生活との区別がつかなくなるという人間の生の崇高な目標を視野に据えたものである。心理学の歴史を掘り返せば、ユングもウィリアム・ジェームズも宗教的信仰の重要性を説いている [146]

スタニスラフ・グロフは3000人以上にLSDを投与することで、出生時までさかのぼる過去の記憶の想起や宇宙との合一感など体験を類型化し、ケン・ウィルバーは古今東西の瞑想によって自我を越えた意識の発達段階を類型化した。こうして非日常的な意識状態の領域にまで探求されていくこととなった。

ウィルバーによるパーソン・センタードに対する批判は、個人中心的パーソン・センタード市民宗教という用語に現れており、自己超越という意識の深い成長ではなく、自己と大いなるものを結びつけるために東洋思想を語る心地よさに浸るだけで、実際の実践がともなっていないということである [147]

EQ

EQ(Emotional Intelligence、感情的知性)は、1995年、ダニエル・ゴールマンの著書『EQ-心の知能指数』 [148]によって、人生の満足度を決める要因としてIQ(知能指数)よりも感情を取り扱う能力が多く場合に重要と説かれ、感情教育の重要性が提起された。産業にも応用され、成果を挙げる経営者やセールスマンの特徴は、知能や技術よりも、自他の感情をうまく取り扱う能力や、重圧的ではなく協調的であるということであるというデータも集まっていき、感情教育は重要視されるようになっていった [149]。感情を取り扱う能力は、社会生活を円滑に送るためにも重要であり、教育にどのように取り込んでいくのかということも課題となっている。IQについては、参考文献が400超の『頭のでき-決めるのは遺伝か、環境か』 [150]Intelligence and Howl to Get It)が参考になり、IQが遺伝するという確率は0.5%以下と考えられ、環境の要因が大きい [151]

マインドフルネス・第3世代の行動療法

東洋の禅の方法論が人間の行動を変化させるということが中核となる。自我を客体化して観察するという点でトランスパーソナルの要素を持っている。この手法では、マインドフルネス(mindfulness)という穏やかで、かつ注意深い状態の意識、別の表現では「いま、ここ」に集中することが重視される [152]。これによって、心を含めたあらゆるものごとの変化に気づき行動を変化させる機会を設け、突発的な大きな感情の変化を察知し沈静化することができる。マニュアル化できるため、統計的に科学的に治療効果があるという評価が得られている。適応される精神疾患として、自傷行為や、過食や拒食をする摂食障害、これらを症状としてもつ境界性人格障害など、これまで治療が困難とされてきた精神疾患などにも有効性が示されている。マーシャ・M・リネハン(Marsha M. Linehan)が開発したマインドフルネスを中心とした行動療法は弁証法的行動療法DBT)と呼ばれ [153]、境界性人格障害に特化して発達しこの人格障害にはじめて有効性が認められた行動療法だが [154]、境界性人格障害に多くみられる行動である自傷や自殺、薬物乱用、摂食障害や、うつ状態(うつ病)などそれぞれの精神疾患にも応用されている [155]。弁証法的行動療法は、成人の自殺を減少させる方法として9つのランダム化比較試験(RCT)で最も有効と評価され、思春期の自殺や自傷行為に効果があったと複数の研究で示された唯一の行動療法であり、アメリカでは「抗うつ薬」は「小児や思春期では服用によって自殺率を高める」と警告表示されているがその代替手段として期待が持たれる [156]。自傷行為などの治療においてもっとも重視されるマインドフルネス呼吸法は、仏教の瞑想修行そのものであるといえる [157]。脳科学の研究者によれば、瞑想によってストレスの指標になるアドレナリンというホルモンの分泌が減り幸福感が増す [158]
すでに瞑想は大企業で導入されているトレーニングコースである。マッキンゼー、アップル、グーグル、IBM、ヤフー、AOL [159]、ジェネラル・モーターズ(GM)、京セラ、森永、東武百貨店、住友重機工業 [160]、どんどん探すことができる。

さて、最後に自傷行為治療の専門家であるバレント・W・ウォルシュ博士の車の運転のエピソード、フロム流の愛するための技術を引用するとしよう。
自傷行為治療ガイド
B.W.ウォルシュ『自傷行為治療ガイド』松本俊彦訳、金剛出版、2007年。
さまざまな療法に言及しかつ実践的です。

数年前、私は、カルフォルニアの海岸沿いを南側へと運転したことがある。(中略)道路にはガードレールがなかった。だから、ほんのささいなミスが悲惨な事故につながって、命を落としかねないという気がした。(中略)額に汗が噴き出し、ハンドルを握る両手には不自然に力が入った。
(中略)
いかに自分が大きなストレスにさらされているのかを認識するにつれ、運転中の私は、おそるおそるマインドフルネス呼吸法スキルを試みはじめた。すると私は数分のうちに、恐怖感を払拭されて、心の落ち着きをとりもどし、運転に集中できるようになったのである。
(B.W.ウォルシュ『自傷行為治療ガイド』松本俊彦訳、金剛出版、2007年。ISBN 978-4772409568。155-156ページより引用。(原著 TREATING SELF-INJURY: A Practical Guide, 2006))

参考文献

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出典

出典
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^73 Timothy Leary, Interpersonal Diagnosis of Personality, 1957 ISBN 1592447763.
^75, ^77 ロイ・J デカーヴァロー『ヒューマニスティック心理学入門-マズローとロジャーズ』伊東博訳、新水社、1994年。ISBN 978-4915165603。35-36ページ
^76 ウォルター・トルーエット・アンダーソン『エスリンとアメリカの覚醒-人間の可能性への挑戦』伊藤博訳、誠信書房、1998年。ISBN 978-4414302844。182ページ。(原著 THE UPSTART SPRING:Esalen and The Americn Awakening, 1983)
^78 ジェームズ・レッドフィールド/マイケル・マーフィー/シルビアティンバース『進化する魂』山川紘矢訳、山川亜希子訳、角川書店、2004年。ISBN 978-4047914667。309ページ。(原著 GOD AND THE EVOLVING UNIVERSE, 2002)
^79, ^109 オルダス・ハクスリー『知覚の扉』河村錠一郎訳、平凡社ライブラリー、1995年。ISBN 978-4582761153。(原著 The Doors of Perception, 1954. Appendixes of Heaven and Hell, 1956)
^80 レイチェル・ストーム『ニューエイジの歴史と現在-地上の楽園を求めて』《角川選書》、高橋巌訳、小杉 英了訳 角川書店、1993年。ISBN 978-4047032453。120-121ページ。(原著 IN SEARCH OF HEAVEN STORM, 1991)
^81 引用元の論文:アブラハム・マズロー(上野圭一訳)「メタ動機:価値ある生き方の生物学的基盤」 ロジャー・N. ウォルシュ+フランシス ヴォーン編『トランスパーソナル宣言-自我を超えて』吉福伸逸訳編、春秋社、1986、ISBN 978-4393360033。225-244ページ。(原著 BEYOND EGO, 1980)
^82 ウォルター・トルーエット・アンダーソン『エスリンとアメリカの覚醒-人間の可能性への挑戦』伊藤博訳、誠信書房、1998年。ISBN 978-4414302844。115-121ページ。(原著 THE UPSTART SPRING:Esalen and The Americn Awakening, 1983)
^83 スタニスラフ・グロフ、ハル・ジーナ ベネット『深層からの回帰-意識のトランスパーソナル・パラダイム』菅靖彦訳、吉田豊訳、青土社、1994年。ISBN 978-4791753277。38ページ。(原著 THE HOLOTROPIC MIND, 1992)
^84 ウォルター・トルーエット・アンダーソン『エスリンとアメリカの覚醒-人間の可能性への挑戦』伊藤博訳、誠信書房、1998年。ISBN 978-4414302844。68ページ。(原著 THE UPSTART SPRING:Esalen and The Americn Awakening, 1983)
^85 デビッド・ジェイ・ブラウン、レベッカ・マクレン・ノビック『内的宇宙の冒険者たち-意識進化の現在形』菅靖彦訳、八幡書店、1995年。ISBN 978-4893503206。278-280ページ。(原著 MAVERICKS OF THE MIND, 1993)
^86 アービング・カーシュ『抗うつ薬は本当に効くのか』石黒千秋訳、エクスナレッジ、2010年。ISBN 978-4767809540。25ページより。(原著 THE EMPEROR’S NEW DRUGS, 2009)
^87 アービング・カーシュ『抗うつ薬は本当に効くのか』石黒千秋訳、エクスナレッジ、2010年。ISBN 978-4767809540。24‐25ページ。(原著 THE EMPEROR’S NEW DRUGS, 2009)
^88 マーティン・A.リー、ブルース・シュレイン『アシッド・ドリームズ-CIA、LSD、ヒッピー革命』越智道雄訳、第三書館、1992年。ISBN 978-4807492039。55-56、62ページ(原著 ACID DREAMS The CIA, LSD and the Sixties, and Beyond, 1985)
^89 ティモシー・リアリー、リチャード・アルパート、ラルフ・メツナー『チベットの死者の書-サイケデリック・バージョン』菅靖彦訳、1994年。ISBN 978-4893503190。(原著 The Psychedelic Experience, 1964)
^90 マーティン・A.リー、ブルース・シュレイン『アシッド・ドリームズ-CIA、LSD、ヒッピー革命』越智道雄訳、第三書館、1992年。ISBN 978-4807492039。69ページ(原著 ACID DREAMS The CIA, LSD and the Sixties, and Beyond, 1985)
^91 幻覚剤の治療臨床試験、本格化へ(上) (WIRED VISION、2004年10月01日)
^92 アンドルー・ワイル (2) サイケデリックスが自然治癒力を解き放つ(Entheorg)
^93 ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン 『脳を鍛えるには運動しかない!-最新科学でわかった脳細胞の増やし方』野中香方子訳、日本放送出版協会、2009年。147ページ。ISBN 978-4140813539。(原著 SPARK, 2008)
^94 U.・ナイサー『認知心理学』大羽蓁訳、誠信書房、1981年。ASIN B000J7ZNBA
^95 フランシス J. ヴァレーラ、ジェレミー W. ヘイワード『徹底討議 心と生命-「心の諸科学」をめぐるダライ・ラマとの対話』山口泰司訳、山口 菜生子訳、青土社、1995年。ISBN 978-4791753826。133ぺージ。
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^97 デビッド・ジェイ・ブラウン、レベッカ・マクレン・ノビック『内的宇宙の冒険者たち-意識進化の現在形』菅靖彦訳、八幡書店、1995年。ISBN 978-4893503206。17ページ。(原著 MAVERICKS OF THE MIND, 1993)
^98 ジェームズ・L・マッガウ『記憶と情動の脳科学』《ブルーバックス》、久保田競訳、大石高生、講談社、2006年。ISBN 978-4062575140。40-43ページ。(原著 Memory and Emotion, 2003)
^99 脳工学に挑む日本のカミカゼ神経科学者たち(『ル・モンド・ディプロマティーク』日本語・電子版、2001年8月)
^100 『人間理解の科学-心理学への招待-第2版』鈴木清・編、ナカニシヤ出版、2002年。ISBN 978-4888487153。82ページより引用。
^101, ^103 ジョン・J.・レイティ『脳のはたらきのすべてがわかる本』堀千恵子訳、角川書店、2002年。ISBN 978-4047914063。274-283ページ。(原著 A USER’S GUIDE TO THE BRAIN, 2001)
^102 ノーム・チョムスキー「訳者あとがき」『9・11-アメリカに報復する資格はない!』文春文庫、山崎淳訳、2002年。ISBN 978-4167651282。141-142ページ。(原著 9・11, 2001)
^104 S.I.ハヤカワ『思考と行動における言語 第4版』大久保忠利訳、岩波書店、1985年。ISBN 978-4000009775。(原著 Language in Thought and Action, 1978 1ed:1939)
^105 ノーム・チョムスキー『メディア・コントロール-正義なき民主主義と国際社会』《集英社新書》、鈴木主税訳、2003年。ISBN 978-4087201901。(原著 Media Control: The Spectacular Achievements, 1991.1997.2002)
^106 ロバート・ディルツ『ロバート・ディルツ博士の天才達のNLP戦略-NLPが解明する「天才はなぜ天才か」』田近秀敏監修、佐藤志緒訳、ヴォイス、2008年。ISBN 978-4899762249。445ページ。(原著 Strategies of Genius Vol1, 1994)
^107 L.マイケル・ホール『NLPハンドブック-神経言語プログラミングの基本と応用』橋本敦生訳、浅田仁子訳、春秋社、2006年。ISBN 978-4393360446。18ページ。(原著 the Sourcebook of Magic, 2004)
^108 ミルトン・H.エリクソン、ジェフリー・K.ザイク&ブレント・B.ギアリー編『ミルトン・H・エリクソン書簡集』田中由美子訳、二瓶社、2008年。リチャードとジョンの二人がISBN 978-4861080500。(原著 The Letters of Milton H. Erickson, 2000)
^110 リチャード・バンドラー、ジョン・グリンダー『魔術の構造』トマス・コンドン監訳、尾川丈一訳、高橋慶治訳、石川正樹訳、亀田ブックサービス、2000年。ISBN 978-4906364343。(原著 The structure of magic, 1975)
^111 L.マイケル・ホール『NLPハンドブック-神経言語プログラミングの基本と応用』橋本敦生訳、浅田仁子訳、春秋社、2006年。15、29ページ。ISBN 978-4393360446。(原著 the Sourcebook of Magic, 2004)
^112 ロバート・ディルツ『ロバート・ディルツ博士の天才達のNLP戦略-NLPが解明する「天才はなぜ天才か」』田近秀敏監修、佐藤志緒訳、ヴォイス、2008年。ISBN 978-4899762249。464ページ。(原著 Strategies of Genius Vol1, 1994)
^113 市井雅哉「EMDR(眼球運動による脱関作と再処理法)」『エビデンス・ベースト・カウンセリング-現代のエスプリ別冊』内山喜久雄・坂野雄二編、2004年。ISBN 978-4784360338。177-187ページ。
^114 ダヴィド・S・シュレベール『フランス式「うつ」「ストレス」完全撃退法』山本知子訳、アーティストハウスパブリッシャーズ、2003年。ISBN 978-4048981385。111、120、134ページ。(原著 GUÉRIR, 2003)
^115 ロジャー・J・キャラハン『TFT<思考場>療法入門-タッピングで不安、うつ、恐怖症を取り除く』穂積由利子訳、春秋社、2001年。i、6-7ページ。ISBN 978-4393364109
^116 マギー・フィリップス『最新心理療法-EMDR・催眠・イメージ法・TFTの臨床例』田中究監訳、穂積由利子訳、浅田仁子訳、春秋社、2002年。ISBN 978-4393364383。208ページ。(原著 FINDING THE ENEGY TO HEAL, 2000)
^117 ロジャー・J・キャラハン『TFT<思考場>療法入門-タッピングで不安、うつ、恐怖症を取り除く』穂積由利子訳、春秋社、2001年。10ページ。ISBN 978-4393364109
^118 ロジャー・J.キャラハン『TFT(思考場)療法入門-タッピングで不安、うつ、恐怖症を取り除く』穂積由利子訳、春秋社、2001年。ISBN 978-4393364109。(原著 Tapping the Healer Within
^119 ロジャー・J・キャラハン『TFT<思考場>療法入門-タッピングで不安、うつ、恐怖症を取り除く』穂積由利子訳、春秋社、2001年。85ページ。ISBN 978-4393364109
^120 ロジャー・J・キャラハン『TFT<思考場>療法入門-タッピングで不安、うつ、恐怖症を取り除く』穂積由利子訳、春秋社、2001年。83、89、114ページ。ISBN 978-4393364109
^121 ロジャー・J・キャラハン『TFT<思考場>療法入門-タッピングで不安、うつ、恐怖症を取り除く』穂積由利子訳、春秋社、2001年。49、192-193ページ。ISBN 978-4393364109
^122 ロジャー・J・キャラハン『TFT<思考場>療法入門-タッピングで不安、うつ、恐怖症を取り除く』穂積由利子訳、春秋社、2001年。49、209-211ページ。ISBN 978-4393364109
^123 ロジャー・J・キャラハン『TFT<思考場>療法入門-タッピングで不安、うつ、恐怖症を取り除く』穂積由利子訳、春秋社、2001年。64-65、75-76、238ページ。ISBN 978-4393364109
^124 マギー・フィリップス『最新心理療法-EMDR・催眠・イメージ法・TFTの臨床例』田中究監訳、穂積由利子訳、浅田仁子訳、春秋社、2002年。ISBN 978-4393364383。339ページ。(原著 FINDING THE ENEGY TO HEAL, 2000)
^125 ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン 『脳を鍛えるには運動しかない!-最新科学でわかった脳細胞の増やし方』野中香方子訳、日本放送出版協会、2009年。ISBN 978-4140813539。(原著 SPARK, 2008)
^126 ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン 『脳を鍛えるには運動しかない!-最新科学でわかった脳細胞の増やし方』野中香方子訳、日本放送出版協会、2009年。122ページ。ISBN 978-4140813539。(原著 SPARK, 2008)
^127 ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン 『脳を鍛えるには運動しかない!-最新科学でわかった脳細胞の増やし方』野中香方子訳、日本放送出版協会、2009年。132ページ。ISBN 978-4140813539。(原著 SPARK, 2008)
^128 ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン 『脳を鍛えるには運動しかない!-最新科学でわかった脳細胞の増やし方』野中香方子訳、日本放送出版協会、2009年。156-160ページ。ISBN 978-4140813539。(原著 SPARK, 2008)
^129 ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン 『脳を鍛えるには運動しかない!-最新科学でわかった脳細胞の増やし方』野中香方子訳、日本放送出版協会、2009年。200ページ。ISBN 978-4140813539。(原著 SPARK, 2008)
^130 ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマン 『脳を鍛えるには運動しかない!-最新科学でわかった脳細胞の増やし方』野中香方子訳、日本放送出版協会、2009年。238ー240ページ。ISBN 978-4140813539。(原著 SPARK, 2008)
^131 『神秘学カタログ』荒俣宏編、鎌田東二編、河出書房新社、1987年。ISBN 978-4309717524。86-87ページ。
^132 デイビッド・ブレイジャー『禅セラピー-仏教から心理療法への道』大沢美枝子訳、木田満里代訳、恩田彰・監、コスモスライブラリー、2004年。47-48ページ。ISBN 978-4434048982。(原著 ZEN THERAPY, 1995, 2001)
^134, ^143 岡野守也『トランスパーソナル心理学 増補新版』青土社、2000年。ISBN 978-4791758265。83ページ。
^135, ^136 ジョン・ホーガン『科学を捨て、神秘へと向かう理性』竹内薫訳、徳間書店、2004年11月。ISBN 978-4198619503。234-235ページ。(原著 Rational mysticism, 2003)
^137 ジョン・ホーガン『科学を捨て、神秘へと向かう理性』竹内薫訳、徳間書店、2004年11月。ISBN 978-4198619503。230ページ。(原著 Rational mysticism, 2003)
^138 ティモシー・リアリー『神経政治学』山形浩生訳、1989年。ISBN 978-4845703227。312-313ページ。(原著 neuropolitics new edition, 1988, 1ed 1977)
^139 ケン ウィルバー『ワン・テイスト-ケン・ウィルバーの日記〈上〉」青木聡訳、コスモスライブラリー、2002年。ISBN 978-4434018060。22ページ。(原著 ONE TASTE, 1999)
^140 ケン ウィルバー『アートマンプロジェクト-精神発達のトランスパーソナル理論』吉福伸逸訳、菅靖彦訳、プラブッダ訳、春秋社、1986年。ISBN 978-4393360026。(原著 The Atman Project, 1980)
^141 ケン・ウィルバー『グレース&グリット―愛と魂の軌跡-上』伊東宏太郎訳、春秋社、1999年。ISBN 978-4393364031。323-325ページ。(原著 GRACE AND GRIT, 1991)
^142 ダライ・ラマ、ダニエル・ゴールマン『なぜ人は破壊的な感情を持つのか』加藤洋子訳、アーティストハウスパブリッシャーズ、2003年。ISBN 978-4048981446。254-255ページ。(原著 Destructive Emotions, 2003)
^144 小林司『「生きがい」とは何か-自己実現へのみち』NHKブックス、1989年。ISBN 978-4140015797。72-82ページ。
^145 ウォルター・トルーエット・アンダーソン『エスリンとアメリカの覚醒-人間の可能性への挑戦』伊藤博訳、誠信書房、1998年。ISBN 978-4414302844。132ページ。(原著 THE UPSTART SPRING:Esalen and The Americn Awakening, 1983)
^146 D・カーネギー「私の両親はいかにして悩みを克服したか」という章『道は開ける』香山晶訳、創元社、ISBN 4-422-10002-5。(原著 How to Stop Worrying and Start Living)改訂が多いので章で指定します。
^147 ケン ウィルバー『ワン・テイスト-ケン・ウィルバーの日記〈下〉」青木聡訳、コスモスライブラリー、2002年。ISBN 978-4434021374。82-91ページ。(原著 ONE TASTE
^148 ダニエル・ゴールマン『EQ-こころの知能指数』土屋京子訳、《講談社プラスアルファ文庫》、1998年。ISBN 978-4062562928。(原著 emotional intelligence, 1995)
^149 ダライ・ラマ、ダニエル・ゴールマン『なぜ人は破壊的な感情を持つのか』加藤洋子訳、アーティストハウスパブリッシャーズ、2003年。ISBN 978-4048981446。197-199ページ。(原著 Destructive Emotions, 2003)
^150 リチャード・E・ニスベット『頭のでき-決めるのは遺伝か、環境か』水谷淳訳、ダイヤモンド社、2010年。ISBN 978-4478001240。(原著 Intelligence and Howl to Get It, 2009)
^151 リチャード・E・ニスベット『頭のでき-決めるのは遺伝か、環境か』水谷淳訳、ダイヤモンド社、2010年。ISBN 978-4478001240。28ページ。(原著 Intelligence and Howl to Get It, 2009)
^153 マーシャ・M.リネハン『境界性パーソナリティ障害の弁証法的行動療法-DBTによるBPDの治療』大野 裕訳、阿佐美 雅弘訳、岩坂 彰訳、井沢 功一朗訳、松岡 律訳、石井 留美訳、誠信書房、2007年。ISBN 978-4414414240。(原著 Cognitive-Behavioral Treatment of Borderline Personality Disorder, 1993)
^154 マーシャ・M.リネハン『弁証法的行動療法実践マニュアル-境界性パーソナリティ障害への新しいアプローチ』小野和哉監訳、金剛出版、2007年。ISBN 978-4772409865。13ページ。(原著 Skills Training Manual for Treating Borderline Personality Disorder, 1993)
^155 アレック・L.ミラー、マーシャ・M.リネハン、ジル・H.イサス『弁証法的行動療法-思春期患者のための自殺予防マニュアル』高橋祥友訳、金剛出版、2008年。ISBN 978-4772410168。(原著 Dialectical Behavior Therapy With Suicidal Adolescents, 2007)
^156 アレック・L.ミラー、マーシャ・M.リネハン、ジル・H.イサス『弁証法的行動療法-思春期患者のための自殺予防マニュアル』高橋祥友訳、金剛出版、2008年。ISBN 978-4772410168。3、51-53ページ。(原著 Dialectical Behavior Therapy With Suicidal Adolescents, 2007)
^159 パトリシア・アバディーン『メガトレンド2010』経沢香保子監訳、ゴマブックス、2006年。ISBN 978-4777104215。254-270ページ。(原著 Megatrends 2010, 2005)
^160 小山克明『リーダーはなぜ瞑想するのか-超越瞑想で始まる心の時代』さんが出版、1998年。ISBN 978-4880960289

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