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栄養学と身体の病気や心理学的な関連―科学的根拠、2012年3月~2011年

栄養学生活習慣病に関する2011年前後の科学的根拠のまとめ。

  • 各食品と、生活習慣病や死亡リスクに対する詳細なパーセンテージが出てきた。大規模な統計で肉は1日42グラム以下が死亡リスクの上がらない摂取量で、摂取量は減少傾向。
  • 栄養と臨床精神医学、心理学が結構リンクしてきた。身体疾患と精神のリンク。ここでは深く言及しないが瞑想は結構な蓄積で精神疾患だけでなく、心血管系の負担を減らし、ストレスにも痛みにも大脳皮質の強化や遺伝子の発現の変化から相当に応用が効く。もう少し書きました➫瞑想
  • 健康に悪影響があるので砂糖に税をかけるべきだとネイチャー誌。
  • 飲料では、人工甘味料や、レッドブルなど10代~20代前半をターゲットにしたエナジードリンクのリスク、エナジードリンクはアルコール依存症にリンクしている。
  • 全死亡の4%に関わるアルコールの有害性に対しWHOが各国に施策を求める、月に1回宴会するだけで有益作用を打ち消すほどアルコールの許容量が少ない、特に女性に対する悪影響が大きい、15~29歳の若者が死亡する要因の9%を占める。

一方、産業がもたらす公害が原因となる、ガンのような「人工的」な病気で終末期にある患者が被らなければならない、辛くて苦しい痛みはどうするのか。二○世紀後半、産業中心の卑しくもみすぼらしい文化に暮らす人間の体に備わった脳は、こうした新たな病を扱うようにはできていない。
(ティモシー・リアリー、R・U・シリアス『死をデザインする』栩木玲子訳、河出書房新社、2005年。ISBN 978-4309906591。247ページ。(原著 Design for Dying, 1997))

世界保健機関(WHO)は、ジャンクフードや高カロリージュース広告の制限、有害なアルコール使用の制限、たばこの広告の禁止、を各国の保健機関に求めている。
糖尿病や心疾患などで世界で3600万人が死亡 WHO報告書(日本生活習慣病予防協会)
ジャンクフードや高カロリージュース広告の制限は、アメリカではマクドナルドが目の敵にされている。

精神の健康と生活習慣―アメリカ心理学会(APA)誌2011年論文

21世紀には、セラピー的生活習慣を、精神と医療、公衆衛生の中心的な焦点にする必要があるかもしれません。最大の死亡要因である心血管疾患、肥満、糖尿病、がんは、禁煙、運動、食事、飲酒というたった4つに大きく決定されます。
8つ主要なセラピー的生活習慣の変化 (TLCs:therapeutic lifestyle changes)とは、運動、食事と栄養、自然の中での時間、人との結びつき、レクリエーション、リラックス、ストレス対策、敬虔さあるいはスピリチュアルなかかわりです。
(―ロジャー・ウォルシュ:アメリカ心理学会誌論文より。Roger Walsh “Lifestyle and Mental HealthAmerican Psychological 66(7), October 2011, pp579-92. PMID 21244124.)

これまで言われてきた身体の生活習慣病を予防する生活が、精神疾患も予防し症状を緩和する。生活習慣と精神疾患のちょこちょことした論文はあるので、世界保健機関(WHO)とまで言わないでも(ずっと待ってるけど)、アメリカ心理学会(APA)誌がまとめて論文を載せたのは、世論への影響が大きいね、ぶっといね。8つのうち後ろに行くほど、フィジカル(物質)の影響が離れるから面白いね。後ろのほうはトランスパーソナル心理学(超個心理学, transpersonal)の天才がやってるほう、瞑想や利他主義をハーバード大学とかでfMRI(脳映像装置)とか遺伝子とかを見て研究している。

このうち食習慣に関しては。
野菜や果物、魚のふんだんな食事:子供の認知能力と学業成績を向上させ、大人では感情と統合失調症の症状を改善し、加齢に伴う認知機能の低下やアルツハイマー病、パーキンソン病を予防する。
オメガ3脂肪酸:オメガ3脂肪酸の低い摂取量は情動障害の高い有病率に関連。組織内の低いオメガ3脂肪は感情と統合失調症の両方の疾患の重症度に相関している。認知症との関連はまだ決定的ではない。
オメガ3脂肪酸のサプリメントによる補充:うつ病、双極性障害、周産期うつ病におそらく有効である。統合失調症やハンチントン病に恩恵がある可能性がある。RCT81名で、3か月のオメガ3脂肪酸の補充は陰性陽性の症状だけでなく、完全な精神病への進行リスクを27.5%から4.9%にまで減らし、中断後9カ月後も持続していた、このように持続性がある抗精神病薬はなく、抗精神病薬はより副作用も多い。ADHDの攻撃性や症状を減らす。母体の摂取により乳児の認知機能の向上、高齢者では認知機能の低下を防ぐが、アルツハイマーには効果がないようである。
このような感じでかなり網羅的に

生活習慣の変化は精神疾患を予防し安全に諸症状を緩和する―2011年アメリカ心理学会(APA)誌の論文

過去の参考記事

砂糖の依存性と有害性―砂糖税を導入せよ―『ネイチャー』


砂糖はアルコールやタバコ同様に、依存性や健康上のリスクがある。
・Lustig RH, Schmidt LA, Brindis CD. “Public health: The toxic truth about sugar” Nature. 2012 Feb 1;482(7383):27-9. doi: 10.1038/482027a. PMID 22297952.
Should Sugar Be Regulated like Alcohol and Tobacco? (TIME.com, February 2, 2012)
Sugar tax needed, say US experts (BBC, 2 February 2012)

脂肪酸・脂質・油

炭水化物とタンパク質と脂質のエネルギー比率だけでは健康との関連は説明できない。さらに脂質の種類、炭水化物の種類と吸収速度、タンパク質の動物・植物で考慮する必要がある。また、食品単位での研究はすでに主流である、栄養成分や有害成分は食品単位で傾向があり、消費者に分かりやすいので。

過去の参考記事

油・脂肪酸の分類―おさらい

必須脂肪酸: オメガ9脂肪酸 オメガ6脂肪酸 オメガ3脂肪酸。
非必須脂肪酸: 飽和脂肪酸(WHO勧告上限カロリー比10%) トランス脂肪酸(WHO勧告上限カロリー比1%)。

すでに言われてきたことは飽和脂肪酸は動物性脂肪(陸上動物を表す)と言われるものに含有比率が高く、トランス脂肪酸もその摂取量に比例する。ほかにトランス脂肪酸はマーガリンやショートニングのような固い油や揚げたものに。この2つの脂肪酸はアメリカの最大死因である心臓疾患の原因の研究からのものは相当蓄積されている。
健康を促進するといわれている、オメガ3脂肪酸(魚や大豆、なたね―キャノーラ、亜麻仁―フラックス、えごま、麻で比率が高い)は、ある疾患との関連、健康な場合など、複雑にエビデンスが蓄積されている。全体的な傾向は、不足しがちな油なので健康を維持するのに必要である。2000年以降は脳の約60%が脂肪であることから精神との関連で研究が豊富になってきており、最近では因果関係があるとの見方はおかしいものではない。

トランス脂肪酸と認知症がリンク―オメガ3脂肪酸とビタミンが豊富では脳萎縮や認知機能低下があまりみられない

ビタミンB(B1、B2、B6、葉酸、B12)、C、D、Eやオメガ3脂肪酸が血中に多い、またトランス脂肪酸の血中レベルが高くない高齢者では、認知能力の低下や脳萎縮はあまりない。
・Bowman GL, Silbert LC, Howieson D, Dodge HH, Traber MG, Frei B, Kaye JA, Shannon J, Quinn JF. “Nutrient biomarker patterns, cognitive function, and MRI measures of brain aging” Neurology. 2012 Jan 24;78(4):241-9. Epub 2011 Dec 28. PMID 22205763.

トランス脂肪酸と攻撃性がリンク

945人の成人男女を対象として、トランス脂肪酸の摂取量と、興奮性と攻撃性が関連付けられていた。

・Golomb BA, Evans MA, White HL, Dimsdale JE. “Trans fat consumption and aggression” PLoS One. 2012;7(3):e32175. Epub 2012 Mar 5. PMID 22403632. PMCID PMC3293881.

研究者は、「トランス脂肪酸と高い攻撃性との関連の証拠は、学校や刑務所の食事からトランス脂肪酸を低減することの根拠になる」としている。
More trans fat consumption linked to greater aggression (eurekalert, 13-MAR-2012)

油の高温酸化とアルデヒド生成の関係

・Maria D. Guillen, , Patricia S. Uriarte “Aldehydes contained in edible oils of a very different nature after prolonged heating at frying temperature: Presence of toxic oxygenated α,β unsaturated aldehydesFood Chemistry. 2012;131(3) pp915-926.

ラットでのカンナビノイド受容体CB1とオメガ3脂肪酸欠乏と抑うつ

ラットを使い、オメガ3脂肪酸の欠乏がカンナビノイド受容体CB1に与える影響で、抑うつを説明できる
・Lafourcade M, Larrieu T, Mato S et al. “Nutritional omega-3 deficiency abolishes endocannabinoid-mediated neuronal functions” Nat Neurosci. 2011 Mar;14(3):345-50. Epub 2011 Jan 30. PMID 21278728.

肉―牛豚肉を毎日食べることは死亡リスクを高める

男性37698人、女性83644人、22年間追跡、ハーバード大学。赤肉(牛・豚・羊)、とくに加工肉(ホットドッグ、ハム・ソーセージなど)が死亡リスクを高める、種別は、毎日の赤肉1サービング:82グラムで死亡リスクが13%増加、心血管疾患18%増加、がん%10増加、加工肉1サービングでは死亡リスクが20%増加、心血管疾患21%増加、がん16%増加。

赤肉および加工肉を1日82グラム摂取した場合の死亡リスク、がん心血管疾患リスクの増加率
種別 具体的には 死亡リスク 心血管疾患 がん
赤肉 牛豚羊 13%増加 18%増加 10%増加
加工肉 ハム・ベーコン・ソーセージなど 20%増加 21%増加 16%増加

これらの肉食品には生活習慣病のリスクを高める、ヘム鉄(鉄分の細分。ヘム鉄は動物性食品に含まれる、非ヘム鉄は植物性食品に含まれる)、飽和脂肪酸、ナトリウム(塩分の細分、塩が加工肉に含まれる)、硝酸塩(加工肉には高頻度で亜硝酸Na)が含まれる。
それらの肉食品を、置き換えることによる死亡リスクの低下は、魚7%、豆類10%、低脂肪牛乳や低脂肪乳製品10%、鶏肉14%、全粒穀物14%、ナッツ類19%低下。すべての人が肉を1日半サービング42グラム以下なら、死亡リスクの低下は男性9.3%、女性7.6%と推定している。
・Pan A, Sun Q, Willett WC, Hu FB et al. “Red Meat Consumption and Mortality: Results From 2 Prospective Cohort Studies” Arch Intern Med. 2012 Mar 12. [Epub ahead of print] PMID 22412075.
すでに2007年世界がん研究基金の勧告として、赤肉とくに加工肉を減らすこと、週に300グラム以下を公衆目標としている。摂取量が少ないほど、リスク増加の閾値が分からない。既存の研究では特に加工肉は2型糖尿病のリスクを高める。

放射線とがん―以前考えられたよりよりリスクが大きい

Radiation May Be a Greater Cancer Risk for Adults Than Doctors Thought (TIME.com, October 25, 2010)

1日1時間のウォーキングで、体重増加を促進するDNAの活性化を阻害する

Walking Can Cut the Effect of Weight-Gaining Genes in Half (TIME.com, March 15, 2012)

『ランセット』誌、アルコールだけでなくコーヒーも心筋梗塞の引き金

36の研究から。アルコールやコーヒーは5%と、怒り3.1%や重い食事2.7%よりも心筋梗塞の高い引き金となる。大気汚染が7.4%と最も多い、次点が運動6.2%。
・Nawrot TS, Perez L, Kunzli N, Munters E, Nemery B. “Public health importance of triggers of myocardial infarction: a comparative risk assessment” Lancet. 2011 Feb 26;377(9767):732-40. PMID 21353301.

ジュース

これまでに、砂糖添加飲料水(スポーツドリンク含む)による体重増加に対する科学的根拠は政府の介入を必要とするほど十分に蓄積されている。果糖飲料つまり、フルーツジュースの果糖が腹部肥満を引き起こすのではないかと考えられている。無果汁ドリンクは砂糖が添加されたドリンクに入る。あとは、コーラを強力にしたようなエナジードリンク。あとは、ゼロカロリー飲料のリスク、これはまだまだ研究が進んでいない。

砂糖の健康への悪影響の関連は十分にある。

砂糖添加飲料で冠動脈性心疾患のリスク増加

42883人、男性、前向きコホート研究、ハーバード大学研究。砂糖添加飲料は、体重増加と2型糖尿病に関連付けられているが、冠動脈性心疾患(CHD)のリスクにも関連。人工甘味料(ゼロカロリー甘味料)は関連なし。
・de Koning L, Malik VS, Kellogg MD et al. “Sweetened Beverage Consumption, Incident Coronary Heart Disease and Biomarkers of Risk in Men” Circulation. 2012 Mar 12. [Epub ahead of print]. PMID 22412070.

すでにアメリカ心臓協会(AHA)が、砂糖は男性1日ティースプーン9杯女性6杯までを勧告している。
・Johnson RK, Appel LJ, Brands M, Howard BV, Lefevre M, Lustig RH, Sacks F, Steffen LM, Wylie-Rosett J; American Heart Association Nutrition Committee of the Council on Nutrition, Physical Activity, and Metabolism and the Council on Epidemiology and Prevention. “Dietary sugars intake and cardiovascular health: a scientific statement from the American Heart AssociationCirculation. 2009 Sep 15;120(11):1011-20. Epub 2009 Aug 24. PMID 19704096.
Sugars and Carbohydrates (American Heart Association, Updated:Tue, 12 Oct 2010)
AHAの勧告はおそらく世界保健機関による2003年の「摂取カロリーに対する10%を上限とする」勧告と同等か少しゆるいくらいの基準。

フランスでは肥満抑制のためのソーダ税施行。砂糖と人工甘味料問わず甘味飲料に対する依存症がある。

ゼロカロリー飲料で腎機能低下

女性3318人、ハーバード大学研究。人工甘味料1日2本で、eGFR30%低下。腎機能低下のリスクが2倍。

・Lin J, Curhan GC. “Associations of sugar and artificially sweetened soda with albuminuria and kidney function decline in women” Clin J Am Soc Nephrol. 2011 Jan;6(1):160-6. Epub 2010 Sep 30. PMID 20884773.
既存の追跡研究では、人工甘味料は流産のリスクを高める。

エナジードリンク・アルコール

エナジードリンクのレッドブルは、若者をターゲットとしたマーケティングをしている。日本では、音楽と関連した音楽フェスティバルやクラブの中のバーカウンターや自販機、路上で「エナジー足りてる?」と言って無償で提供、コンビニに販路がある。健康上の重篤な危険やアルコール依存症とリンク。

アメリカでの収益は90億ドルで、そのほとんどが25歳未満からである。エナジードリンクは、カフェイン入りソーダ(筆頭としてコーラ。コーヒーの半分のカフェインを含む)の3倍のカフェインを含み、それはカフェイン錠ほどもある。
ドイツ保健局は2002年以来調査しており、有害事例は、肝臓障害、発作、急な高い心拍数(*訳が分からない。racing heart rate)、呼吸器疾患および死を含む。カフェインは一般に子供に睡眠不足を促す。
ほかにたとえば、ADHDに処方されるメチルフェニデート(リタリン)などの適切な濃度による覚せいレベルを維持できない。
Energy Drinks May Harm Health, Especially for Children(TIME.com, February 14, 2011)

週1以上のエナジードリンクの消費者は、DSMのアルコール依存症の基準を満たすリスクは2.4倍である。
・Arria AM, Caldeira KM, Kasperski SJ, Vincent KB, Griffiths RR, O’Grady KE. “Energy drink consumption and increased risk for alcohol dependence” Alcohol Clin Exp Res. 2011 Feb;35(2):365-75. doi: 10.1111/j.1530-0277.2010.01352.x. Epub 2010 Nov 12. PMID 21073486.

エナジードリンクが、発作、糖尿病、心臓の異常、または気分や行動の障害、特定の薬の重篤な副作用に関連する。
・Seifert SM, Schaechter JL, Hershorin ER, Lipshultz SE. “Health effects of energy drinks on children, adolescents, and young adults” Pediatrics. 2011 Mar;127(3):511-28. Epub 2011 Feb 14. PMID 21321035.

2009年ドイツでは「レッドブル・コーラ」からコカインが検出されたことがある。
コーラからコカイン レッドブル、販売禁止も(共同通信、2009年5月31日)
もともとコカ・コーラが20世紀初頭にはコカインを除去せずに売っていた。現在では、コカインを除去した「香味料」が添加された飲料である。

Four Loko drink、カフェイン入り麦芽アルコールーアルコール入りエナジードリンク

2010年10月にアルコール入りエナジードリンクの多飲によって10名の大学生が病院に搬送された。また、カフェイン粉末を飲み死亡した例も。
A Man Dies After Overdosing on Caffeine(TIME.com, November 2, 2010)
FDAがアルコール入りエナジードリンクを警告。
FDA Issues Warning to Four Loko, 3 Other Drink Makers(abc news, Nov. 17, 2010)
FDA calls 7 caffeine-alcohol drinks unsafe(CNN, November 18, 2010)

アルコールは女性で乳がんのリスクを高めるため1日1杯以下と、男性の1日2杯以下より目標摂取量が低く設定される。1日1杯では健康に寄与する病気もある。同時に、脳萎縮やがんなど最低の量などないものもある。アルコール自体、発がん物質である。15~29歳の若者の死亡の要因の9%を占める。暴力の原因であり、その対象はしばしば配偶者や子供である。飲酒運転では交通事故のリスクを高める。

酒の種別と量による、純アルコール量の適当な目安
純アルコール量 ビール・カクテル(5度) ワイン・日本酒(15度)
1杯 10g 250ml 90ml
2杯 20g 500ml (1合)180ml
4杯 40g 1000ml (2合、ワイン瓶半分)360ml
6杯 60g 1500ml (3合)540ml
8杯 80g 2000ml (酒4合、ワイン瓶1本)750ml
1杯を純アルコール10gとする健康日本21の基準を採用。
世界がん研究基金による1杯は、度数10~15度基準。

男性は1日2杯以下で純アルコール量20g以下、女性では男性の半分の1日1杯以下、純アルコール量10g以下が推奨される。度数では、度数が強いほど口周辺のがんのリスクが高い。
健康日本21運動において、この量は、非飲酒者に飲酒を勧めるものではない、高齢者はもっと少なめにすべきであり、すぐ顔が赤くなりやすい人も同様である。
過度の飲酒、1回で4~5杯の飲酒を月に1回するだけで、飲酒によるリスクが向上する。

2011年WHO、アルコール乱用に対する施策を各国政府に求める

アルコールの使用に問題を抱える患者は7600万人以上、毎年250万人がアルコールを起因として死亡し、全世界の死因の4%を占める。
がん、循環器疾患、肝臓、膵臓、メタボリックシンドローム、認知症、抑うつのほか60疾患のリスクとなる。
・Coltart C, Anderson I, Barh B, Dewhurst N, Donohoe J, Dukat A, Gilmore I, Gunaratne P, Hood V, Kershenobich D, Kolbe J, Li P, Liang R, Madaree A, Mayosi B, Phanthumchinda K, Thompson R. “An international consensus for medical leadership on alcohol” Lancet. 2011 Oct 1;378(9798):1215. Epub 2011 Sep 14. PMID 21924487.

アルコール依存症(AUD)とニコチン依存症(ND)の日韓比較。
Comparing alcohol use and other disorders between the United States and South Korea (eurekalert, 16-Jan-2012)

WHO、2010年アルコールの有害使用低減世界戦略の採択、各国に施策求める

アルコールは世界で毎年250万人を殺しており、世界のすべての死亡の4%を占め、この250万人の死亡には毎年32万人の15~29歳の若者の死亡を含み若年層死亡(層の9%を占める)のもっとも大きな背景である。
採択された施策の提案には、小売店の営業時間の制限、イベントにおいての制限、アルコール商品をスポーツやイベントと結び付けるマーケティングの影響力を弱めることやスポンサーシップの規制、成人層へのマーケティングから若者を守る予防手段、大量飲酒や若年層の飲酒を抑制するための価格設定、飲み放題・割引ほかの制限、事業者に対する補助金の停止、酩酊状態になるまでアルコールを出すことへの法的規制、を含む。
Global strategy to reduce harmful use of alcohol(WHO)
Follow the process for implementing the WHA 61.4 resolution and preparing a draft global strategy to reduce harmful use of alcohol(WHO)

日本でも4%程度である。日本での2008年の調査で、20~24歳の飲酒率が女性は男性を上回った。アルコール依存症はうつ病と並んで、自殺のハイリスクな要因である。しかし、うつ病と比較して適切な予防、治療の戦略がとられていない。

アルコールは少量でもがんのリスクを高める

アルコール、少量でも口腔がん、乳がん、肝臓がんのリスクを高める。
Alcohol Cancer – Drinking Alcohol (MD Anderson Cancer Center, December 2010)

月1回の過度の飲酒、1回で男性5杯以上、女性4杯以上でアルコールの有益な作用はなくなる。約96万人から。

44件の研究95万7684人からメタアナリシス。少量のアルコール摂取には有益な作用があるとされる。過度の飲酒が1ヵ月1度だっただけで有益な作用はなくなり、リスクの増加に関連付けられる。過度の飲酒とは、1回で男性5杯以上、女性4杯以上呑んだ場合である。
・Roerecke M, Rehm J. “The cardioprotective association of average alcohol consumption and ischaemic heart disease: a systematic review and meta-analysis” Addiction. 2012 Jan 9. doi: 10.1111/j.1360-0443.2012.03780.x. [Epub ahead of print] PMID 22229788.
Alcohol and your heart: friend or foe? (Centre for Addictionand Mental Health: CAMH, January 30, 2012)

1日1杯以下のアルコールでも乳がんリスク増加

週3~6杯、1日0.25~0.5杯程度のアルコールでも乳がんのリスクが15%増加。1日2杯以上では51%増加。飲酒をやめてもリスクは低下しない可能性がある。
・Chen WY, Rosner B, Hankinson SE, Colditz GA, Willett WC. “Moderate alcohol consumption during adult life, drinking patterns, and breast cancer risk” JAMA. 2011 Nov 2;306(17):1884-90. PMID 22045766.
以前からアルコールによるエストロゲン分泌の亢進が原因と言われている。

アルコール依存症者のセロトニン機能が半減するまで女性は4年、男性は12年

週にワイン12本分のアルコール摂取でセロトニンの機能が半減するまで、男性では12年かかるが、女性では4年しかからない。既存の研究では、アルコール依存症は、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどの機能の低下にリンク。

The serotonin system in women’s brains is damaged more readily by alcohol than that in men’s brains (University of Gothenburg, Sweden, NOV 09, 2011)
・Yael Waknine “Alcohol Abuse More Detrimental to the Female Brain” (Medscape, December 1, 2011)
・Fahlke C, Berggren U, Berglund KJ, Zetterberg H, Blennow K, Engel JA, Balldin J. “Neuroendocrine assessment of serotonergic, dopaminergic, and noradrenergic functions in alcohol-dependent individuals” Alcohol Clin Exp Res. 2012 Jan;36(1):97-103. doi: 10.1111/j.1530-0277.2011.01598.x. Epub 2011 Jul 28. PMID 21797890.

セロトニン機能が低下すると男性は衝動的に、女性はもっと落ち込む傾向

・Walderhaug E, Magnusson A, Neumeister A, Lappalainen J, Lunde H, Refsum H, Landro NI. “Interactive effects of sex and 5-HTTLPR on mood and impulsivity during tryptophan depletion in healthy people” Biol Psychiatry. 2007 Sep 15;62(6):593-9. Epub 2007 Jun 4. PMID 17544379.

女性のアルコール飲酒と精神疾患

女性の摂食障害とアルコール依存症の併発は、12%だが、30歳以下に限ると70%が併発するので、臨床での若い女性のアルコール依存症では摂食障害の併存を疑うべきだとしている。その際、5年後の死亡率は摂食障害単独で2.9%、アルコール依存症単独で2~4%であるのに対し、アルコール依存症併発では25%になり、うちわけは自殺半分、アルコール関連疾患半分。
・『摂食障害の診断と治療ガイドライン2005』
上記ガイドラインでは、摂食障害患者の好む食品として、
パン、ケーキ、チョコレート、ヨーグルト、カッテージチーズ、アイスクリーム、キャンディ、ドーナッツ、ソフトクリーム、ポテトチップス、クッキー、魚のフライ・・などなどを挙げ、説明できる仮説としてオピオイド説を挙げている。以降のアメリカでのジャンクフード依存症の進展はこの説を十分に補強する。

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